ここでは、非上場株式・少数株式の売却方法とその流れについて解説します。

1.非上場株式・少数株式の売却方法とその流れ

非上場株式・少数株式・譲渡制限株式は、以下のとおり、株式譲渡承認請求・株式買取請求を行うことにより、適正価格て、売却することができるのです。 以下詳細に解説します。

以下に、非上場株式・少数株式の売却方法の鳥観図と流れ図を掲載しています。両方とも解説していることは同じです。朝刊図については、①→⑥の流れで手続きが流れますので、数字を追って見て頂けましたら幸いです。流れ図については、手続きが上から下へと流れてゆきますので、流れに沿って見て頂いてましたら幸いです。

非上場株式・少数株式の売却方法の鳥観図

非上場株式・少数株式の売却方法の流れ図

2.非上場株式・少数株式の株式譲渡承認請求

まず、非上場株式・少数株式・譲渡制限株式を第三者に譲渡する場合、会社の承認を得るために株式譲渡承認請求を行う必要があります(上記図①)。

3.株式譲渡承認請求の承認または拒否【2週間以内】

株式譲渡承認請求をされた会社は、取締役会または株主総会などの譲渡承認機関で株式譲渡の承認可否の決定をします(上記図②)。

 会社が株式譲渡承認請求を受けた日から2週間以内に株主に対して通知を行わなければ、株式譲渡の承認、不承認にかかわらず、自動的に株式譲渡承認をしたとみなされてしまいます(これを「みなし承認」といいます)ので、注意が必要です。

4.株式譲渡承認された場合のその後の流れ

譲渡が承認された場合、譲渡する側の株主と譲渡される側の譲渡先との間で、株式譲渡契約の締結が行われます。 譲渡する側の株主は、株式譲渡契約に基づき、譲渡される側の譲渡先に対して、株式を売却します。これにより、無事、株式が売却できます。

5.株式譲渡承認が拒否された場合の株式買取請求

5-1.株式買取通知【40日以内】

株式譲渡承認機関の株式譲渡承認決議の結果が株式譲渡承認が拒否となった場合、請求者である株主は、発行会社に、「株式買取請求」を行うことができます(上記図③)。

その際、会社は自身が対象株式を買い取るか指定買取人を指定するかのどちらかを決定して、株式買取の手続きを行わなければなりません。

その後、会社は株式買取資金の供託を実施し、株主に対して、供託証明書を交付し、会社が株式を買い取る旨を通知します。この通知は、株式譲渡承認「拒否」通知から40日以内に行われなければいけません(上記図③)。

もしこれが行われなかった場合は、会社は株式譲渡について承認をしたとみなされます(これを「みなし承認」といいます)。

5-2.簿価純資産価格の供託【40日以内】

会社は、株式譲渡承認「拒否」通知から40日以内に、株式買取通知を行う必要がありますが、その際、会社は株式買取資金の供託を実施したうえで、株主に対して、供託証明書を交付し、会社が株式を買い取る旨を通知する必要があります(上記図③)。

この株式買取資金の供託ですが、簿価純資産価格に基づく株式買取資金の供託が求められます。

5-3.指定買取人が買い取る場合の株式買取通知【10日以内】

一方、指定買取人が株式を買い取る場合、指定買取人が株主に対して株式を買い取る旨を通知しますが、この通知も不承認となった株式譲渡承認請求から10日以内に行われなかった場合は、会社は株式譲渡について承認をしたとみなされます。

5-4.株式買取価格の協議【20日以内】

会社や指定買取人による株式買取通知が行われた場合、次に、譲渡制限株式の株式売買価格を協議して決める必要があります。この、株式か売買価格の協議は、株式買取通知から20日以内に行う必要があります(上記図④)。

 株式売買価格は、株主と会社や指定買取人との間での協議により決まりますが、この協議はスムーズに進まないことが大半です。

株式売買価格が協議で決まらない場合は、20日以内であれば、裁判所に株式売買価格の決定を申し立てることができます。

20日以内に株式売買価格決定の申し立てが行われない場合は、簿価純資産価格で株式売買価格が決定されることになります(上記図⑤)。

5-5.株式売買価格決定申立裁判の申立て【20日以内】

株式売買価格が協議で決まらない場合、20日以内に、裁判所に株式売買価格の決定を申し立てることができます(上記図⑥)。

この株式売買価格決定申立は、株主側からでも会社側からでも双方から行うことができます。ようするに、株式売買価格が、簿価純資産価格では不都合だと考える当事者が、株式売買価格裁判を申し立てることとなります。

5-6.株式売買価格決定申立裁判の訴訟遂行方法

株式売買価格決定申立が行われたら、弁護士は、株式売買価格決定申立の裁判の中で、裁判所に対して、非上場株式の適切な価格を主張・立証し、最終的に裁判所が適切な非上場株式の売買価格を決定することになります。

この点、裁判所に任せておけば裁判所が株式売買価格を決定してくれるわけではないことに注意が必要です。

すなわち、当事者や弁護士が、株式価値について、主張立証を尽くす必要があり、この点、株式価値評価やファイナンス理論に詳しくない弁護士では太刀打ちできませんので、必ず、株式価値評価やファイナンス理論に詳しい弁護士にご依頼される必要があります。 勿論、裁判ですので、決定が出る前に、和解が成立することもありますし、むしろそちらの方が圧倒的に多くなっています。