非上場株式・少数株式の株式価値算定裁判例分析4(tf事件)!
非上場株式・少数株式の株式価値算定裁判例分析4(tf事件)
tfは、大阪本社のほか、東京、名古屋など5か所の支店等と4か所の工場、中国に生産拠点
tfの従業員数は、131名
tfの発行済株式総数は、19万6000株であり(内3万4880株は自己株式。議決権株式総数は16万1120株)
本件は、少数株主(利害関係人)が、tfに対し、tf株式について、乙山に譲渡すること、及びこれを承認しない場合はtf又はその指定買取人(申立人=YMD株式会社の投資ファンド)が同株式を買い取ることを求めた事案。
株式価値算定裁判例4(tf事件)におけるtfの支配株主
tf企画 :持株数 3万7660株、議決権比率23.4%
GLSIA :持株数 2万8060株、議決権比率17.4%
tf従業員持株会:持株数 2万3500株、議決権比率14.6%
丁田 :持株数 2万0800株、議決権比率12.9%
合計:持株数11万0020株、議決権比率68.3%
株式価値算定裁判例4(tf事件)におけるtfの少数株主
:持ち株数 3500株、議決権比率 2.17%
:かつてtfの取締役及び監査役を務めていた。
株式価値算定裁判例4(tf事件)における非上場株式・少数株式の株式価値評価の方針
【判旨】裁判所が譲渡制限株式の売買価格を決定するに当たっては、「会社の資産状態その他一切の事情」を考慮しなければならない(会社法144条3項)。裁判所が決定すべき売買価格は、譲渡等承認請求の時点における株式の客観的な交換価格であるが、譲渡制限株式には取引相場がないから、会社の資産状態のほか、会社の収益状況、1株当たりの収益又は配当額、配当政策・配当能力、将来の事業の見通し、業界の状況といった、会社の事業活動及び財務状況等に関する一切の事情を考慮して、客観的に妥当な価格を定める必要がある。
株式価値算定裁判例4(tf事件)で採用された非上場株式・少数株式の株式価値評価方法
結論・・・配当還元法
【判旨】tfが、相応の規模を有し、比較的安定した利益を上げている会社であって、今後も事業活動を継続していくことが予想されること、②本件売買は非支配株主間のものであって、売買される株式数が議決権総数に占める割合も極めて小さく、買主である申立人は、本件株式の取得により直ちにtfの経営支配権を得ることができないことはもちろん、他の株主から株式を取得してtfの経営支配権を獲得することも現実的には極めて困難な状況にあること、すなわち、売主である利害関係参加人及び買主である申立人がいずれも、配当の取得を主な利益ないし目的とせざるを得ない地位にあり、本件売買は、実質的には、将来の配当に対する期待を売買するのと同視できることなどを総合すると、本件tf株式の評価については、将来において予測される配当額を現在の価値に引き直して株式価値を算定する配当還元法を採用するのが最も合理的かつ相当というべきである。 |
【判旨】純資産法は、会社の有する将来の収益獲得能力を適正に評価しきれないため、事業継続を前提とした会社の株式評価には適さないとされている。また、本件売買においては、売主である利害関係参加人も買主である申立人も、会社を清算して会社資産の持分を取得することはできず、配当の取得を主な利益ないし目的とせざるを得ない地位にある。 したがって、本件においては、純資産法による評価額を採用することは、株式価値を過大評価することとなって相当でないというべきである。 |
【判旨】tf株式については、DCF法により評価することも考えられる。しかし、本件売買においては、売主である利害関係参加人及び買主である申立人のいずれもが、配当の取得を主な利益ないし目的とせざるを得ない地位にある。 また、tfにおいては、利益の多くが事業用資産に再投資されており(平成22年12月から平成25年11月までの3年間における税引前利益の合計は約4.7億円、営業キャッシュ・フローの合計は約1.8億円であり、同期間における投資キャッシュ・フローの合計はマイナス約7億円である。)、資産として計上されている現金等は必要運転資金であると考えられることから、実際に配当の原資となり得る現金等の非事業用資産は、内部留保の全体額と比べて少ないといえる。 したがって、本件tf株式については、配当を現在価値に割り引く配当還元法の方が、DCF法よりも合理的な評価方法というべきである。 |
配当性向
予想配当性向
:業界平均 (19.5%)
:上場会社平均(33.0%)
理由・・・tfの配当性向は4%ないし5%と相対的にも低水準であるため、これをそのまま予想配当性向とすることは相当でない。
収益還元法(DCF法)の割引率
割引率(COEC)8.251%
参考:裁判例
株式売買価格決定申立事件(甲事件、乙事件、丙事件)株式売買価格決定申立事件(甲事件、乙事件、丙事件)
【事件番号】
大阪地方裁判所決定/平成25年(ヒ)第134号、平成25年(ヒ)第135号、平成25年(ヒ)第136号
【判旨概要】
株式譲渡制限のある株式会社の経営状況や売買対象となる株式が支配株となり得ないような状況等に鑑みて、配当還元法による評価をすべきであり、これによると、1株当たり2,195円と定めるのが相当である。