株式買取請求権裁判例分析2(旧カネボウ事件東京高裁)
株式買取請求権裁判例分析2(旧カネボウ事件東京高等裁判所)
旧カネボウの事業譲渡に際して、少数株主から平成17年法律第87号改正前商法245条ノ2に基づき、少数株主から反対株主の株式買取請求権が行使された事例である。
平成17年法律第87号改正前商法245条ノ2の「公正ナル価格」の算定にあたって、DCF法による評価が相当であるとし、DCF法を採用し、これを用いて株式買取価格を決定することとされた。
なお、この場合に、マイノリティ・ディスカウント(非支配株式であることを理由とした減価)や非流動性ディスカウント(市場価格のないことを理由とした減価)を行うことの可否も争われた。
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株式買取請求権裁判例における株式価値評価方法の選択
DCF法
※この判例では、反対株主の株式買取請求権の制度趣旨を、下記のとおり、「株式買取請求権は、少数派の反対株主としては株式を手放したくないにもかかわらずそれ以上不利益を被らないため株式を手放さざるを得ない事態に追い込まれることに対する補償措置として位置付けられるものである」と、少数株主の保護制度であるとし、したがって、株式価値評価の方法は、売主の立場からではなく、買主の立場からのみ判断するべきものとして、売主の立場での株式価値評価方法である、収益還元法を採用したものと思われる。
株式買取請求権裁判例の株式価値評価方法におけるディスカウントの取り扱い
非上場会社の反対株主の株式買取請求権による株式買取価格決定に際して、マイノリティ・ディスカウントや非流動性ディスカウントは行うことは許されない、との高裁判例が出た件であるが、この高裁判例では、反対株主の株式買取請求権の制度趣旨を、下記のとおり、「株式買取請求権は、少数派の反対株主としては株式を手放したくないにもかかわらずそれ以上不利益を被らないため株式を手放さざるを得ない事態に追い込まれることに対する補償措置として位置付けられるものである」と、少数株主の保護制度であるとし、したがって、株式価値評価の方法は、売主の立場からではなく、買主の立場からのみ判断するべきものとして、売主の立場での株式価値評価方法である、収益還元法を採用し、かつ、売主の立場での株式価値評価方法との趣旨を貫徹するため、非流動性ディスカウントも行うべきではないものと判断したものと思われる。
【判旨】本件の株式買取請求権は、少数派の反対株主としては株式を手放したくないにもかかわらずそれ以上不利益を被らないため株式を手放さざるを得ない事態に追い込まれることに対する補償措置として位置付けられるものであるから、マイノリティ・ディスカウント(非支配株式であることを理由とした減価)や非流動性ディスカウント(市場価格のないことを理由とした減価)を本件株式価値の評価に当たって行うことは相当でないというべきである。 |
【カネボウ事件高裁】
各株式買取価格決定に対する抗告事件
【事件番号】
東京高等裁判所決定
【判決日付】
平成22年5月24日
【判旨概要】
反対株主の株式買取請求における旧商法245条ノ2の「公正ナル価格」を算定するにあたっては、インカムアプローチのうち、将来のフリー・キャッシュ・フローを見積もり、年次ごとに割引率を用いて現在価値の総和を求め、当該現在価値に事業外資産の価値を加算し、負債の時価を減算して企業価値を算出し、株主が将来得られると期待される利益を算定する方法であるDCF法を採用するのが適切である。