株式譲渡承認請求・株式買取請求の際の売主追加請求の可否!

株式譲渡承認請求・株式買取請求の際の売主追加請求の可否

株主が株式譲渡承認請求株式買取請求を行い、会社が株式譲渡承認を拒否した場合、会社が自己株式取得を行うこととなりますが、この場合、通常の自己株式の取得と同様、他の株主が会社に対して、売主追加請求を行うことができるかというと、この場合には会社法160条3項の適用はなく、同項による売主追加請求はできません。

具体的な法適用については次のとおりです。
会社法第4節第2款「株主との合意による取得」の156条から165条までの規定については、156条2項にある一定の場合には適用がされません。

そして、156条2項では、155条2号(138条1号ハの請求があった場合)があげられておりますので、譲渡承認が否決されて、会社に株式の買取りを請求するときは、156条以下の「株主との合意による取得」の規定は適用されないことになります。

株主が株式譲渡承認請求株式買取請求を行った場合には、財源規制は適用されますが、通常の自己株式取得の手続は、適用されないということです。

ですので、会社法160条3項の株式会社による自己の株式の取得に際する「売主追加請求」の適用はなく、株主が株式譲渡承認請求株式買取請求を行った場合、他の株主は「売主追加請求」をすることはできないということとなります。

また、補足ですが、株主が株式譲渡承認請求株式買取請求を行った場合、このように、通常の自己株式取得の手続は、適用されないということなら、株式会社は、自己株式の取得を行うと言っても、自己株式の取得の株主総会も開催する必要もない、ということかというとそうではありません。

株主が株式譲渡承認請求株式買取請求を行った場合、株式譲渡承認請求株式買取請求の条文において、株主総会の決議が求められています。

非常に残念ですね。

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参考:会社法

(総則)
第155条
株式会社は、次に掲げる場合に限り、当該株式会社の株式を取得することができる。

一 略
二 第138条第一号ハ又は第二号ハの請求があった場合
三から十三 略

(株式の取得に関する事項の決定)
第156条
株式会社が株主との合意により当該株式会社の株式を有償で取得するには、あらかじめ、株主総会の決議によって、次に掲げる事項を定めなければならない。ただし、第三号の期間は、一年を超えることができない。
一 取得する株式の数(種類株式発行会社にあっては、株式の種類及び種類ごとの数)
二 株式を取得するのと引換えに交付する金銭等(当該株式会社の株式等を除く。以下この款において同じ。)の内容及びその総額
三 株式を取得することができる期間
前項の規定は、前条第一号及び第二号並びに第四号から第十三号までに掲げる場合には、適用しない。

(特定の株主からの取得)
第160条

1 株式会社は、第百五十六条第一項各号に掲げる事項の決定に併せて、同項の株主総会の決議によって、第百五十八条第一項の規定による通知を特定の株主に対して行う旨を定めることができる。

2 株式会社は、前項の規定による決定をしようとするときは、法務省令で定める時までに、株主(種類株式発行会社にあっては、取得する株式の種類の種類株主)に対し、次項の規定による請求をすることができる旨を通知しなければならない。

3 前項の株主は、第一項の特定の株主に自己をも加えたものを同項の株主総会の議案とすることを、法務省令で定める時までに、請求することができる。

4 第一項の特定の株主は、第百五十六条第一項の株主総会において議決権を行使することができない。ただし、第一項の特定の株主以外の株主の全部が当該株主総会において議決権を行使することができない場合は、この限りでない。

5 第一項の特定の株主を定めた場合における第百五十八条第一項の規定の適用については、同項中「株主(種類株式発行会社にあっては、取得する株式の種類の種類株主)」とあるのは、「第百六十条第一項の特定の株主」とする。