非上場株式・少数株式の株式価値評価にける取引事例法の取り扱い!

非上場株式・少数株式の株式価値評価における取引事例法の否定

取引事例法は、対象株式の過去の取引事例を参考に、非上場株式・少数株式の株式価値評価を行う株価算定方法です。

しかし、その参考にする過去の取引事例としては、何でもいいわけではありません。

この点、取引事例法は、対象会社の非上場株式・少数株式の過去の取引事例を基準とする方式であるが、過去の取引事例を参考にすることができるのは、その価格に客観性が認められる場合、すなわち、「ある程度の取引量があり、取引が第三者間において行われた公正な取引であって、最近の事例であること、などの採用基準を満たす場合」でなければならない(東京地方裁判所商事研究会編『類型別会社非訟』90頁(判例タイムズ社・2009年))と指摘されています。

また、旧カネボウ各株式買取価格決定申立事件平成20年3月14日東京地方裁判所決定も、「本件鑑定人の株式鑑定評価意見書によれば,取引事例法の意義,使用する場合の留意点は,以下のとおりであることが認められる。

a 取引事例方式とは,過去における対象会社の非上場株式・少数株式の売買実例をもとに非上場株式・少数株式の株式価値を算定する方法である。

b 取引事例価格をもって評価額とするためには,

①当該取引事例が,鑑定の対象となる事案と取引量が本件と同程度であること,
②当該取引事例の時点が本件と比較的直近で,その間に経営,業績等に大きな変化のないこと,
③当該取引事例が独立した第三者間で行われたものであることが必要であるとされている。」として、取引事例法を否定しています。

また、非上場株式・少数株式株式売買価格決定申立事件平成26年9月26日東京地方裁判所決定(kisen事件)においても、「取引事例法は、比較する取引事例の、
①取引量が同程度であること、
②取引時点が比較的直近であり、その間に経営・業績等に大きな変化がないこと、
③取引が独立した第三者間で行われ、取引件数がある程度あることという条件が満たされていることが必要であるところ、東京都観光汽船の株式の過去の取引事例については、本件取引事例1件が認められるだけである上、その取引量も本件と同程度ということはできないから、上記①③の条件を満たさず、本件において取引事例法を採ることはできない。」とされ、取引事例法を否定しています。

また、

非上場株式・少数株式株式売買価格決定申立事件平成27年7月16日大阪地方裁判所決定(tf事件)においても、「取引事例法については、そもそも、市場性のない株式の取引先例が客観的交換価値を適正に反映しているといえるかという根本的な疑問点がある。

したがって、取引事例法は、他の評価方法による評価額の妥当性を検証するための参考とする程度にとどめるのが相当であって、本件株式の評価方法として採用することはできないというべきである。」とされています。

取引事例法といっても、非上場会社においては、なかなか類似取引というべきものが見当たることはなく、安易に採用すべきではないものと思われます。

⇒非上場株式・譲渡制限株式・少数株式を売却できずにお困りの方はこちら!