少数株主権を行使して社長の責任追求をするための方法・流れを詳しく解説 

少数株主権とは、一定以上の株式を保有する株主が行使できる権利のことです。大株主や経営陣の経営を監視して、社長の専断的行為や不正行為の抑止や責任追及するための権利です。

今回は、少数株主権の内容と社長に責任追及するための方法と流れを解説します。 

近時では、敵対的少数株主・株式買取業者社長に対して、少数株主権を行使して、社長の責任を追及することが増えてきています。 

そこで、特に、少数株主権の中から実務的に敵対的少数株主・株式買取業者が、社長責任追及のために行使する傾向のある権利を中心に解説するので、ぜひ参考にしてください。 

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少数株主権とは

少数株主権とは、一定以上の株式を保有する株主が行使できる権利のことです。大株主や経営陣の経営を監視して、社長の専断的行為や不正行為の抑止や責任追及をするための権利です。

少数株主が行使できる少数株主権は、権利は保有する株数によって異なり、保有株式が多いほど行使できる権利も多くなります。 

株主の権利は自益権と共益権がある

株主の権利には、そもそも、自益権と共益権があります。 

  • 自益権:株主が自分自身のために持つ権利
  • 共益権:株主が会社のために持つ権利 

先述した少数株主権は共益権に含まれ、会社の経営に参加したり、経営を監視したりするための権利です。 

株主の権利には少数株主権と別に単独株主権があります。単独株主権についても解説します。 

単独株主権と少数株主権の違い 

単独株主権とは、1を保有しているだけで行使することができる権利のことです。単独株主権と少数株主権を併せて、少数株主権ということもあります。 

単独株主権一覧

代表的な単独株主権は、以下の通りです。 

単独株主権の内容 
株主総会の議決権 
剰余金の配当を受ける権利 
残余財産の分配を受ける権利 
株主総会の議案提案権 
会社の組織に関する行為の無効の訴えの提起権 
株主総会決議取消の訴えの提起権 
各種行為の差止請求権 
株主代表訴訟(役員責任の追及等の訴え提起権 
取締役・執行役の違法行為差止請求権 
代表者職務執行停止の仮処分を行う権利 
仮取締役選任の仮処分を行う権利 
役員等の利益相反取引責任免除拒否権 
特別背任罪での刑事告訴権 

これらは、すべて1株を保有しているだけで行使できる権利です。 

少数株主の権利一覧

少数株主権一覧

少数株主権は、内容によって必要な株式数が異なります。少数株式権の種類と行使に必要な株式数は、以下の表にまとめました。 

少数株主権の内容  必要な株式数 
株主総会の議題提案権  総株主の議決権の1/100以上または300個以上 
株主総会の議案通知請求権 
株主総会の招集手続き等に関する検査役選任請求権  議決権の1/100以上 
業務執行に関する検査役選任請求権  議決権の3/100以上または発行済株式総数の3/100以上 
会計帳簿閲覧謄写請求権 
清算人の解任請求権 
役員の解任請求権 
役員等の責任軽減への異議権  議決権の3/100以上 
株主総会招集請求権 
会社解散請求権  議決権の10/100以上または発行済株式総数の10/100以上 

単独株主権と少数株主権を併せて、少数株主権ということもありますので、以下では、単に、少数株主権ということとします  

少数株主権は大株主や経営陣の経営を監視して社長の専断的行為や不正行為の抑止や責任追及するための権利

株式会社の株主は、所有している株式数の割合に応じて経営に参加できる権利を有します。経営に参加するためには、多くの株式を保有する必要があり、少数株主は基本的に経営方針の決定に参加できません。 

原則、株式会社の経営方針は、株主総会に出席した株主の議決権の過半数の決議によって決まります。そのため、大株主の意向は経営方針にも大きく影響します。 

大株主や経営陣の経営や社長の専断的行為や不正行為の抑止や責任追及をし、少数株主の権利を守るために少数株主権が存在します。 

社長の専断的行為や不正行為を発見して責任追求するときの流れ

ここからは、敵対的少数株主・株式買取業者が、株式会社の社長の専断的行為や不正行為を発見して責任追求するときのよくある流れを解説します。 

敵対的少数株主・株式買取業者が、株式会社の社長の専断的行為や不正行為を発見して責任追求するときの流れは、主に以下の通りです。 

  • 会計帳簿閲覧謄写請求権の行使
  • 業務執行に関する検査役の選任
  • 株主総会決議取消しの訴え
  • 社長の善管注意義務違反による損害賠償を請求するために株主代表訴訟を提起 

それぞれ詳しく解説します。

会計帳簿閲覧謄写請求権の行使

敵対的少数株主・株式買取業者は、まずは、会計帳簿閲覧謄写請求権を行使します。会計帳簿を閲覧することで、総勘定元帳や仕訳帳・売掛金元帳などの閲覧が可能です。また、契約書や領収書・請求書なども閲覧できます。 

会計帳簿閲覧謄写請求権を行使するためには会計帳簿を閲覧する理由を明確にしなければなりません。この点、「社長の専断的行為や不正行為の疑いに関して調査するため」との理由であれば、十分に会計帳簿閲覧謄写請求権行使できます。

会計帳簿閲覧謄写請求権の行使が認められれば、会計帳簿を閲覧し謄写して確認して社長の専断的行為や公私混同や不正行為がないか確認します。

会計帳簿閲覧謄写請求権によって、総勘定元帳や仕訳帳・売掛金元帳、契約書や領収書・請求書の閲覧謄写までも可能なのですから、会社の行ったたいていの取引を調査することができ、どのような取引によりどのような損害が発生しているのか確認することもでき、会社の業務のかなりの部分まで調査することができるのです。 

業務執行に関する検査役の選任

敵対的少数株主・株式買取業者は、会計帳簿閲覧謄写請求権だけでなく、業務執行に関する検査役の選任の行使もすることとなります業務執行に関する検査役の選任は会計帳簿閲覧謄写請求権だけでは得られない会計情報以外の調査も行うことができる権利です 

裁判所に選任された調査役会社の業務や財産状況を調査社長の専断的行為や公私混同や不正行為があるかどうか徹底的に調査し、その結果を裁判所に報告します。

会社の業務や財産状況調査を行うのは、裁判所が選任した検査役で主に経験ある弁護士指名されて就任します。そして、検査役は、会社に対する調査権を行使して、会社の内部の業務や財産を徹底的に調査します。そのため、中立的な立場から調査を行うこととなり、社長の専断的行為や公私混同や不正行為に関する証拠を獲得できるのです 

株主総会決議取消しの訴え

敵対的少数株主・株式買取業者は、社長の専断的行為や公私混同や不正行為に関する証拠を発見したら、株主総会決議取消しの訴えを起こすこととなります。

社長が自分勝手に選任した役員の選任を取消したり、社長の専断的行為や公私混同や不正行為の法律効果を取消したりすることができます。れによって、会社の損害を可及的に取り戻すことができ、これ以上の損害の発生を可及的に防ぐことができるのです。  

株主総会決議取消の訴えを提起するには、株主総会の決議があった日から3ヶ月以内のため、スケジュールは事前に決めておきましょう。 

社長の善管注意義務違反による損害賠償を請求するために株主代表訴訟を提起

敵対的少数株主・株式買取業者は、社長の専断的行為や公私混同や不正行為確認したら、社長に対する責任を追及することとなります。 

すなわち、敵対的少数株主・株式買取業者は、会社に対して、社長に対して、善管注意義務違反による損害賠償請求を行うよう求めます。しかし、会社は社長に対する損害賠償請求は行わないことが一般的です。ですので、敵対的少数株主・株式買取業者は、社長に対して株主代表訴訟を提起します。敵対的少数株主・株式買取業者が、会社に代わって、会社を代表して、社長に対する善管注意義務違反に基づく損害賠償請求の訴訟を提起するのです。敵対的少数株主・株式買取業者これに勝訴すれば、社長損害賠償義務を負うこととなります。

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社長の善管注意義務違反の責任追及として特別背任罪で逮捕される

社長が専断的行為や公私混同や不正行為会社に損害を与えた場合、それは、特別背任罪となります。特別背任罪とは、社長や取締役が自己の利益を図るため会社の財産に損害を与えた場合に成立する犯罪行為のことです。 

敵対的少数株主・株式買取業者は、社長の不正行為を確認したら、特別背任罪で刑事告訴します刑事告訴すれば警察が捜査に動きますので、社長逮捕されることもあります。

敵対的少数株主・株式買取業者は、これにより、特別背任罪の刑事告訴によって、社長の善管注意義務違反の責任追求することができるのです 

会計帳簿閲覧謄写請求権

会計帳簿閲覧謄写請求権を行使すれば、会計帳簿とこれに関する資料の閲覧または謄写ができます。 

会計帳簿に挙げられるのは、総勘定元帳や仕訳帳・売掛金元帳などです。また、契約書や領収書・請求書・納品書なども閲覧または謄写できます。 

株式会社の営業時間内であればいつでも請求可能です。 

権利の条件

会計帳簿閲覧謄写請求権を行使するための条件は以下の通りです。 

  • 総株主の議決権の3/100以上
  • 発行済み株式の3/100以上 

1人では保有株式が足りない場合でも、複数人で条件を満たせば権利を行使できます。 

行使するときの主な理由

会計帳簿閲覧謄写請求権を行使する主な理由は以下の通りです。 

  • 取締役の違法行為の差し止めやすでに取締役が行った不正に対して会社に損害賠償を求めるとき
  • 取締役の解任を議題とする株主総会の招集請求を行い、取締役の解任をさせるとき
  • 取締役の解任の訴えを起こすとき 

業務執行に関する検査役の選任

業務執行に関する検査役の選任は、会社の経理や会計面以外で違法行為が行われている可能性があるときに会計情報以外の業務財産状況を調査できる権利です。 

検査を行うのは自分ではなく、裁判所が選任した検査が行います。主に弁護士などが就任します。 

業務執行に関する検査役の選任は、会計帳簿閲覧謄写請求権の行使では、情報収集できない情報を調査できるため、不正行為を発見するために有効な方法です。 

行使するための条件 

業務執行に関する検査役の選任を行使するための条件は以下の通りです。 

  • 総株主の議決権の3/100以上
  • 発行済み株式の3/100以上 

行使するときの主な理由

業務執行に関する検査役の選任を行使する主な理由は以下の通りです。 

  • 経営権紛争
  • 取締役の違法行為の差し止め 

株主総会決議取消しの訴え

株主総会決議取消しの訴えは、株主総会の決議を後から取り消し効力をなくすための訴えです。決議の取り消しは裁判所が決定するため、裁判所へ訴訟提起する必要があります。 

決議の取消しを行うためには、株主総会の決議をなされた日から3ヶ月以内に提起を行わなければなりません。権利を行使する場合は早めの対応が必要です。 

行使するための条件

株主総会決議取消しの訴えを行使するための条件は以下の通りです。 

  • 1株以上の保有 

行使するときの主な理由

株主総会決議取消しの訴えを行使する主な理由は以下の通りです。  

  • 社長や取締役の不正行為を取消す場合
  • 株式会社の意思決定が望ましくない場合 

株主代表訴訟

株主代表訴訟は、取締役に対して株主が会社に代わって経営責任を追求し、損害賠償を請求する訴訟手続きです。会社法では「責任追求の訴え」と言います。 

本来は、取締役の違反行為や経営判断のミスで会社が損害を被ったとき、会社が責任追求しなければなりません。しかし、会社側も取締役との関係性によって責任追求を怠ることもあります。 

そのような場合に、株主が会社を代表して行うことが株主代表訴訟です。 

行使するための条件 

株主代表訴訟を行使するための条件は以下の通りです。 

  • 1株以上の保有 

行使するときの主な理由

株主代表訴訟を行使する主な理由は以下の通りです。 

  • 取締役への責任追求 
  • 違法な利益供与があった場合 

特別背任罪

特別背任罪は、会社法第960条に自己若しくは第三者の利益を図り株式会社に損害を与える目的で、その任務に背く行為をし、当該株式会社に財産上の損害を加えたとき10年以下の懲役若しくは1,000万円以下の罰金に処し、又はこれを併科する。と定められています。 

構成要件

特別背任罪の構成要件は株式会社において一定の権限を有する者が、自己若しくは第三者の利益のため、または株式会社に損害を加えるために会社の任務に背く行為をし、会社に財産上の損害を加えたことです。

刑事告訴するときの手続き

刑事告訴をするときは、書面や口頭で検察官や司法警察員に対して行います。 

特別背任に関する証拠があれば、刑事告訴提出することとなります。 

敵対的少数株主・株式買取業者は、会計帳簿閲覧謄写請求権業務執行に関する検査役の選任権を通じて、特別背任に関する証拠を十分に収集していますので、それらを提出することとなります。有力な証拠があるほど、警察が捜査に動くまでの流れがスムーズになります。 

刑事告訴を書面で行うときは、刑事告訴状を捜査機関に提出し、口頭の場合は捜査機関に告訴の調書を作成してもらいます。  

まとめ

今回は、敵対的少数株主・株式買取業者が行使する少数株主権について、少数株主権の概要や少数株主権行使して社長の責任追求する流れについて解説しました。少数株主権は、大株主や経営陣の経営や社長の専断的行為や不正行為を抑止したり、責任追及したりすることができる少数株主の権利です。 

少数株主権を行使することで、社長の専断的行為や公私混同や不正行為に対して責任追求できます。 

敵対的少数株主・株式買取業者は、社長の責任追及するために、として以下の権利を活用して、以下の流れで行います  

  • 会計帳簿閲覧謄写請求権の行使
  • 業務執行に関する検査役の選任
  • 株主総会決議取消しの訴え
  • 社長の善管注意義務違反に基づく損害賠償請求株主代表訴訟
  • 特別背任罪の刑事告訴 

このような流れを経て、最悪、社長訴訟に巻き込まれて巨額の損害賠償責任を負ったり特別背任罪で逮捕されるということとなりかねません。敵対的少数株主・株式買取業者に介入された場合は、必ず、専門の弁護士に相談し、適切な行動を取れるようにしましょう。 

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