なぜ非上場株式の相続にはデメリットが多いのか⁉その対処法とは?
非上場会社の経営者が亡くなった場合、相続人は非上場株式を相続することになります。
非上場株式を相続すれば、株主になれるので、一見良いことのように感じられます。
しかし、実際は、非上場株式を売却することは難しく、相続税も非常に巨額になる可能性があります。
そのため、非上場株式を相続することにはデメリットが多いのが現状なのです。
今回は、非上場株式を相続するデメリットとは何か、相続した場合の手続きと相続したくない場合の対処法などについて詳しく解説していきます。
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非上場株式の相続にはデメリットが多い!!
日本の株式会社の中の99%が、株式を上場していないといわれてます。
つまり、日本の会社のほとんどが、非上場会社になるのです。
そして、非上場会社の経営者や株式を保有する株主の方が亡くなってしまった場合、当然ながら非上場株式の相続が発生します。
この場合、相続人が会社の後継者であればスムーズに非上場株式の相続ができるかもしれません。
しかし、相続人が後継者でない場合等もあり、この場合、相続人は会社の経営に参加できないことも多く、非上場株式を相続して保有するメリットがあまりありません。
さらに、非上場株式を相続して保有することには、以下のようなデメリットがあるのです。
非上場株式は売却するのが難しい
まず、非上場株式を相続したとしても、それを売却するのは難しいです。
その理由として、非上場株式は買い手を見つけるのが困難ということが挙げられます。
上場株式であれば、市場で取引されており、市場価格にて売却することができます。他方、非上場株式は市場で取引されていないため、上場株式と同じようには売却することができないのです。
そして、市場がなければ自分で買い手を探すしかないのですが、非上場株式の買い手を見つけるのはとても困難です。
仮に、買い手が見つかったとしても、市場価格が無いことにより場合によっては安く買い叩かれるなど、交渉が非常に難しくなります。
これらの理由により、非上場株式を相続してもなかなか売却できないのが現状なのです。
相続しただけで最大55%の相続税がかかる
非上場株式を相続した場合でも、相続税を支払う必要があります。
相続財産に株式が含まれる場合、課税対象の金額が増えるほど高い税率が課される累進課税制度が採用されます。
課税対象金額に対する相続税率は以下の通り、最大で55%にもなってしまうのです。
法定相続分に応ずる取得金額 | 税率 | 控除額 |
1,000万円以下 | 10% | - |
3,000万円以下 | 15% | 50万円 |
5,000万円以下 | 20% | 200万円 |
1億円以下 | 30% | 700万円 |
2億円以下 | 40% | 1,700万円 |
3億円以下 | 45% | 2,700万円 |
6億円以下 | 50% | 4,200万円 |
6億円超 | 55% | 7,200万円 |
相続税の対象金額は、非上場株式の総額ではなく、法定相続割合により分割して法定相続人それぞれの取得金額に対して税率がかけられます。
さらに、相続税の納付期限は、相続の開始があったことを知った日(通常は非相続人が亡くなった日)の翌日から10ヶ月以内に支払わなければなりませんので、注意が必要です。
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非上場株式を物納するのも困難
相続税の支払いには、金銭の代わりに相続財産を納入する「物納」という方法もあります。
但し、物納で相続税を支払うためには、「金銭納付を困難とする理由書」という書類を税務署に提出をして許可を得る必要があるのです。
しかし、相続税を物納する際に、非上場株式以外の相続財産の中に不動産や国債等の財産があった場合は、それらの財産から物納する必要があります。
そのため、非上場株式を確実に物納することができるとは限らないのです。
また、相続した非上場株式が譲渡制限株式や担保権の目的になっている場合は、物納する前に定款変更等の手続が必要となり、余計に費用がかかってしまいます。
このことから、非上場株式を物納することによる相続税の支払いも、なかなか難しいといえるでしょう。
非上場株式を譲渡しても税金がかかる
たとえば、相続をした非上場株式を売却した場合、それによって得た利益に対して所得税が課されます。これを譲渡所得税と言います。
具体的には、非上場株式の売却価格から株式取得価格や経費や譲渡費用などを差し引いた利益に対して、譲渡所得税が課税されます。
● 売却価格-(株式取得価格+経費+譲渡費用)=課税される利益
譲渡所得税の税率は、15%の所得税と5%の住民税と所得税率0.315%の復興特別所得税を足した20.315%です。
一方、非上場株式を無償または著しく低い価格で譲渡をして利益がない場合でも、時価で譲渡したとみなされて課税されるケースもあります。
また、非上場株式を贈与した場合には贈与税が発生します。
その税率は贈与する金額によって変わってきますが、最大55%の税率がかかります。
相続税の評価方法がわかりづらい
非上場株式を相続する場合に、税務署は相続税のために独自の基準で株式の評価を行います。
しかし、非上場株式は、上場株式のように市場での株価が決まっているわけではないため、相続財産としての株式の評価も難しくなります。
また、仮に評価額を算出できたとしても、実際にその評価額で売却することは困難です。
そのため、相続をした非上場株式を売却できたとしても、大損してしまう可能性もあります。
非上場株式・少数株式で巨額の相続税が発生するのに現金化できない場合の対策法とは?
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非上場株式を相続する時の相続税評価方法
非上場株式を相続した場合、基本的には相続税を支払う必要があります。
そこで、課税対象となる非上場株式の金額を決定する必要があります。
しかし、非上場株式は株式市場で取引されているわけではありませんので、市場価格での評価ができません。
そのため、非上場株式の金額は、類似業種比準方式、純資産価額方式、そして配当還元方式という3つの評価方法のいずれかにより評価を行います。
原則的な評価方法とは
まずは、会社の規模により、原則的な評価方法である類似業種比準方式と純資産価額方式のどちらで評価するかを決定します。
会社規模は、総資産価額、従業員数、1年間の取引金額等の会社規模により「大会社」、「中会社の大」、「中会社の中」、「中会社の小」、「小会社」の5つの区分に分けられます。
5つの区分ごとに、類似業種比準方式と純資産価額方式のどちらを使用するかをまとめると、以下の通りになります。
- 大会社:原則、類似業種比準方式により評価。なお、純資産価額方式を選択することも可能。
- 大、中、小の中会社:原則、類似業種比準方式と純資産価額方式との併用により評価。なお、純資産価額方式を選択することも可能。
- 中会社の大:原則、類似業種比準価額×90%+純資産価額×10%で評価。
- 中会社の中:原則、類似業種比準価額×75%+純資産価額×25%で評価。
- 中会社の小:原則、類似業種比準価額×60%+純資産価額×40%で評価。
- 小会社:原則、純資産価額方式により評価。なお、類似業種比準価額×50%+純資産価額×50%を選択することも可能。
このうち、類似業種比準方式とは、市場価格により評価できない非上場会社と同業種の複数の上場会社の株価の平均値を基準に評価する方法です。
同業種の上場会社と、1株当たりの配当金額、1株当たりの年利益金額、1株当たりの純資産価額と比較することにより、取引相場のない非上場株式の1株当たりの評価を求めます。
純資産価額方式とは、相続発生時における評価会社の資産及び負債をもとに1株当たりの分配額を算出して評価額を決定する方式です。
貸借対照表の資産と負債の金額を、相続税法が定める一定の評価額、及び法人税法上の帳簿価額に置き換えた上で、純資産を株数で割ることにより1株当たりの自社株の相続税評価額を算出します。(純資産の算出は、会社を清算すると仮定して、資産の含み益にかかる法人税等に相当する額を控除します。)
例外的な評価方法もある
なお、会社によっては、資産の保有状況や営業の状態等が他の会社と異なるため、原則的な2つの評価方法では適正な評価を行うことができない場合があります。
このような場合、一般の評価会社の株式とは区分して、簡易的で特例的な評価方法である配当還元方式が使用されます。
配当還元方式とは、非上場株式を少数株主が相続や贈与等により取得した場合に使われる評価方式です。
原則として、取引相場のない株式の評価の内、同族株主以外の株主等が取得した株式は配当還元方式により評価することとされています。
配当還元方式は、過去2年間の平均配当金額を10%で割戻して非上場会社の1株当たりの評価額を計算する評価方法で、原則的な評価方法よりも一般的に低い評価額となります。
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非上場株式を相続する場合の手順
非上場株式を相続するには所定の手続きが必要です。
ここでは、非上場株式を相続する場合の手順について一つ一つ詳しく見ていきます。
相続人の調査
相続の手続きとして最初に行うのは、相続人の調査です。
遺産分割協議をするにあたって、まず、相続人の範囲を確定しておく必要があります。協議後に新たな相続人が出てくると、再度協議を行わなければなりません。
そのため、相続人の調査は大切な手続きとなります。
相続人の調査は、被相続人の出生から死亡までの戸籍謄本を取得することによって行います。
相続財産の調査
相続財産の調査は、遺産分割協議の対象を確定するものであり、これも大切な手続きとなります。相続財産としては、金銭、債権、不動産などが考えられます。
相続財産の調査は相続人の調査と並行して進めるとよいでしょう。
上場株式の保有の有無については、証券会社への問い合わせ、証券保管振替機構への照会などを行うことによって、確認することが可能です。
他方、非上場株式については、証券会社への問い合わせなどをしても株式の保有は明らかになりません。
この場合、まず、被相続人の財産のうち、会社の株券、株主総会招集通知、台糖金支払い通知書など非上場株式に関する書類があるか確認します。そして、株式を発行している会社に対して直接連絡を取り、非上場株式の有無を確認することができます。
発行会社への申し出
非上場株式を相続するためには、株式を発行する会社に申し出る必要があります。
申し出をするには、遺言書の有無の確認や記載されている内容の確認、誰が相続人なのかの調査を行い、相続人の確定等が必要です。
株主名簿の管理は、発行会社で自ら行っているケースや、信託銀行や証券代行業者に委託しているケースがありますが、いずれの場合であってもまずは発行会社に申し出をする必要があります。
株式の評価額の決定
非上場株式を相続することにより、相続税が発生します。
相続税は株式の評価額によって決定されます。
非上場株式は市場での取引ができないことにより市場価格での評価ができないため、その評価額は、類似業種比準方式や純資産価額方式、そして配当還元方式のいずれかで決定されます。
この非上場株式の相続時の評価額は、相続人が複数いる場合の遺産分割協議にも多大な影響がありますので、トラブルにもなりやすいです。
そこで、評価額の算定には、トラブルを招かないためにも専門家に依頼することをお勧めします。
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非上場株式相続時の遺産分割協議
相続が発生した場合、相続人の遺産の分割についてトラブルを防ぐためにも、遺産分割協議書の明記がポイントになります。
特に、非上場株式の相続の場合は、相続人が確定したことを証明する資料を会社に提出する必要がありますので、遺産分割協議書が必要です。
遺産分割が終了するまでの間は、相続財産である非上場株式はまだすべての相続者の共有財産です。
そのため、権利を行使するためには、遺産分割協議を行い、権利を行使する代表者を決めて相続の申し出を行う必要があります。
非上場会社の経営者が亡くなった場合は、会社の後継者を誰にするのかが相続時の遺産分割の重要なポイントです。
後継者がフリーハンドで経営を行うためには、株式を相続により全部保有することが前提になります。
株主名簿の書換を行う
誰が非上場株式を相続するのかが遺産分割等で決定し申し出を受けた発行会社は、必要書類を受領、確認した後に株主名簿の書換えを行います。
株主名簿の書換えを行わなければ、相続人は株式の売却や配当金の受領等の株主としての権利を行使することはできません。
非上場株式の相続には、以下等の書類が必要になります。
- 株式名義書換請求書兼株主票
- 株券(株券が発行されている場合)
- 遺言書(遺言書がある場合)
- 印鑑証明書(遺言書がある場合は受遺者、遺言書がない場合は相続人全員)
- 戸籍謄本
- 共同相続人同意書または遺産分割協議書(遺言書がない場合)
株券は、平成18年の会社法の改正により、原則として発行する必要はなくなりました。
発行していない株券の名義書換は、原則として以前の株主と新しい株主が共同で請求しなければなりません。
しかし、相続や合併や会社分割等の一般承継により株式を取得した場合は、一般承継したことを証する書類を提出すれば、共同での名義書換請求の対象外になります。
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相続税の申告
相続財産の調査が終わり、その総額が明確になったら、最後に相続税の申告が必要となる場合があります。それは、相続財産の合計額が相続税の基礎控除額を超える場合です。
● 相続税の基礎控除額=3000万円+相続人の人数×600万円
そして、相続税の申告は、原則として、相続開始があったことを知った日の翌日から10か月以内に行う必要があります。
また、上記期間内に遺産分割協議がまとまらない場合には、配偶者控除の特例や小規模宅地の特例など相続税を低額にするための特例が使えなくなってしまうため、注意が必要です。
なお、相続税申告時に3年以内の分割見込書を提出し、その後、遺産分割が成立した時に更生請求を行えば、特例の適用を受けることができ、税金の還付を受けることも可能です。
非上場株式を相続したくなく、売却もなかなか難しい場合にとるべき方法
非上場株式を相続すると、株式の評価額によっては巨額の相続税が発生する可能性があり、これを支払うのはとても大変です。
また、非上場株式の場合は、物納による相続税の支払いも難しく、売却することも難しいのが現実です。
このように、相続税が巨額のために非上場株式の相続をしたくなく、相続税支払いのための売却もなかなか難しい場合に、どのような方法を選択すればよいのかについて見ていきます。
相続放棄
非上場株式の巨額の相続税の支払回避のための方法の一つとして、相続放棄が挙げられます。
相続放棄とは、被相続人の財産について相続の権利を一切放棄することです。
その対象となるのは、預貯金や不動産などのプラスの資産だけでなく、負債などのマイナスの財産も含めた被相続人のすべての財産です。
相続放棄は、相続の開始を知った時から3ヶ月以内に行う必要があります。一度相続を放棄すれば、基本的には撤回することはできませんので、注意が必要です。
また、相続放棄を行えば、被相続人のすべての財産を放棄することになるため、相続放棄をするか否かは慎重に考えた方がよいでしょう。
第三者に安価で非上場株式を買い取ってもらう
相続放棄をしたくない場合は、第三者に評価額よりも安価で非上場株式を買い取ってもらうことも選択肢の一つです。
基本的には非上場株式の相続は、国税庁の相続税評価に基づき相続税が算出されますが、相続後に速やかに第三者に売却した場合は、第三者への売却価格に基づき相続税が算出されることがあります。
そのため、非上場株式を評価額よりも安価で売却することで、相続税も非常に安く抑えられる可能性があります。
但し、非上場株式のほとんどは譲渡制限株式のため、売却には株式発行会社の承認が必要になりますので注意が必要です。
会社に非上場株式を買い取ってもらう
相続人にとって非上場株式を保有していていること自体にあまりメリットがないとしても、発行会社にとっては自社株式を欲しがっていることも考えられます。
相続により株式の所有者が分散したり、株主が増えたりすることにより、会社の支配権が維持できなくなる恐れがあるためです。
このような場合には、比較的スムーズに発行会社に非上場株式を買い取ってもらうことができる可能性が高くなります。
非上場株式を会社が買い取ってくれない!株式相続をしたら巨額の相続税が発生してしまう!
目次 非上場株式を会社が買い取ってくれない!株式相続をしたら巨額の相続税が発生してしまう!非上場株式を相続するデメリット非上場株式は相続時に巨額の相続税が発生す…
事業承継税制による特例
非上場株式を相続する相続人が経営者だった場合、原則通りに巨額の相続税を課税すると非上場株式を相続できなかったり、事業承継が進まなくなったりという問題が発生します。
このような場合に、事業承継が進まなくなると国にとってもよくないため、事業承継税制という課税の特例規定が法律によって定められています。
事業承継税制とは、一定の要件を満たした場合に、事業の後継者に発生する贈与税または相続税の全額について納税する猶予が受けられる制度です。
この制度を利用することで、相続により事業承継がスムーズに行えるのです。
非上場株式の相続なら弁護士に相談がおすすめ
このように、非上場株式を相続する場合、巨額の相続税がかかる等のデメリットが考えられます。
また、売却もなかなか難しいという問題があります。
これらの問題を解決するには、相続放棄を行った方が良いかの判断や、相続をした非上場株式を会社や第三者に買い取ってもらう交渉を行わなければなりませんが、自分で進めることは容易ではありません。
そのため、一度専門家である弁護士に相談することをお勧めします。
専門的知識や経験が豊富な専門家に相談することにより、具体的事案に応じた解決策が見つかる可能性が高くなります。
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まとめ
今回は、非上場株式を相続する際の手続き、相続したくない場合の対処方法などについて解説しました。
相続するかどうか、相続した後に非上場株式をどう扱うかの判断には時間と労力がかかるだけでなく、専門的な知識も必要となります。
そこで、必要であれば、弁護士に相談し、時間に余裕をもって手続きを進めていきましょう。