株主総会における少数株主の権利一覧と内容をわかりやすく解説

株主総会における少数株主の権利一覧と内容をわかりやすく解説
株主は、保有している株式の割合に応じて投資している会社の経営に参加する権利があります。
会社の経営方針は株主総会の決議によって決まりますが、決議に影響を及ぼさないのが「少数株主」です。
ただ、会社法では、少数株主の権利を保護するために一定要件を満たした少数株主に対してはいくつかの権利が認められています。
この記事では、株主総会における少数株主の権利と内容について詳しく解説します。

少数株主とは

少数株主とは、株式会社の発行済み株式済株式総数のうち、半数に満たない株式を保有している株主のことを指します。
原則として、株式会社の経営方針は株主総会の多数決による決議で決定されます。
株主は、1株について平等の決議権を有していることから、保有している株式の数が多いほど会社の経営方針の決定に関してより強い決定権を持つことになります。
そのため、大株主や会社の経営陣の意向を優先した経営が行われ、少数株主の利益が害されてしまうリスクがあります。
そこで会社法では、株主の利益を保護し、会社の適切な経営を実現するため、少数株主に対して株主総会における一定の権利を認めているのです。

株主総会における少数株主の権利の一覧

具体的に、株主総会において少数株主が行使できる権利として、以下の5つが挙げられます。なお、保有する株式の比率によって異なります。

① 株主総会の議題提案権(総株主の議決権100分の1以上の議決権または300個以上の議決権がある場合)
② 株主総会の議案通知請求権(総株主の議決権の100分の1以上または300個以上の議決権がある場合)
③ 株主総会の招集手続等に関する検査役選任請求権(議決権の1%以上の場合)
④ 株主総会取消決議の訴えの提起(1株以上の株式を保有する場合)
⑤ 株主総会招集請求権(総株主の議決権100分の3以上の議決権がある場合)

株主総会における少数株主の権利の内容

ここからは、それぞれの株主総会における少数株主の権利の内容を詳しく解説します。

株主総会の議題提案権

議題提案権とは、株主が一定の事項を株主総会の目的事項に追加するよう請求できる権利です。
当然ながら、株主総会を開催するには株主総会の目的となる事項を定める必要があり、一定の少数株主には議題提案権が認められます。
取締役会が設置されていない会社においては、すべての株主にこの権利が認められますが、取締役会設置会社では、総株主の100分の1以上の議決権または300個以上の議決権を6ヶ月前から引き続き有する株主にのみ認められます。
また提案する議題は、その株主が議決権を行使できる事項に限ります。
公開会社においては、定款で定められていない場合は株主総会の8週間前までに請求する必要があります。

株主総会の議案通知請求権

株主総会では、株主総会の目的となる事項について議案を提出します。
議案とは、議題に対応する具体的な内容を指しますが、あらかじめ他の株主に周知せずに、株主総会で議案を提案しても他の株主から賛同を得られない可能性があります。
そのため、少数株主が議案を提出しようする場合は、議案の要領をあらかじめ他の株主に通知するよう請求できる権利が認められています。

この権利も、総株主の100分の1以上の議決権または300個以上の議決権を6ヶ月前から引き続き有する場合に行使でき、公開会社に関しては、定款で定められていない場合は株主総会の8週間前までに請求する必要があります。

株主総会の招集手続等に関する検査役選任請求権

少数株主は、株主が株主総会の招集手続きや決議の方法を調査させるために、株主総会の前に裁判所に対して検査役の選任の申立てをすることができます。
招集手続きに関する調査内容は、株主総会の招集が取締役会によって決定されているか、招集通知の記載内容が適切且つ必要な資料が添付されているか、招集通知がすべての株主に発送されているか等です。これらの検査のために、検査役は、株式会社に対して株主総会の招集を決定した取締役会の議事録や、招集通知、招集通知の発送記録などの資料の提出を求めることができます。
決議の方法に関する調査内容は、検査役が株主総会に実際に参加し、株主の資格や定足数、議事運営の状況や採決の状況などについて調査します。検査役は、株主総会の運営の一部始終をビデオカメラなどで撮影し、記録として残します。
なお、検査役は、株主総会の終了後に調査の結果を裁判所に報告する必要があります。

検査役を選任することで、違法または不当な手続きが行われることや、後の紛争などを未然に防止することができます。また、後日紛争が生じた場合には、検査役による報告書を証拠として提出することができます。
この権利は、株主が議決権の1%以上の場合に行使することができます。
また、取締役や監査役が検査役による調査を妨げた場合は、100万円以下の過料に科せられます。

株主総会取消決議の訴えの提起

株主総会取消決議の訴えとは、株主が決議の取消を提起することができる権利です。
具体的に、以下のような場合に取消を請求できます。

  • 株主総会の招集手続きや決議方法が法令または定款に違反し、著しく不公正な場合。
  • 株主総会の決議内容が定款に違反する場合。
  • 特別の利害関係を有する株主が議決権を行使することで著しく不当な決議がされた場合。

また、取消決議の訴えを提起するには、取り消す対象の株主総会決議が行われたこと、原告が提訴権を有していること(原告適格)、株主総会決議の日から3ヶ月以内に訴訟提起を行うこと、訴えの利益があることの3つ要件が必要です。
原告適格については、株主総会の決議によって株式を失った人であっても、訴えを提起してその決議が取り消されることで、株主になることができる場合は訴えを提起することが可能となります。
訴えの利益については、株主総会決議取消の訴えを求める実益が消滅した場合には否認される可能性があります。
なお、株主総会取消決議の訴えの権利については、訴えを提起する時点のすべての株主に認められます。

株主総会招集請求権

株主総会招集請求権とは、取締役に対して株主総会を開催することを請求できる権利です。
原則として、株主総会の招集は、取締役会設置会社においては、取締役会の決定によって招集が決定し、代表取締役が招集を行います。
しかし、現在の役員が解任されることを危惧してまったく株主総会が開催されない場合や、緊急で決議すべき事項があるにもかかわらず臨時株主総会が開催されない場合があります。そうなると、少数株主が株主総会で意見を述べたくてもそれが叶わず、不利益を被る可能性があります。
このような場合に、少数株主は取締役に対して株主総会の招集を請求することができるのです。

なお、株主総会の招集を請求したにもかかわらず、請求のあった日から8週間以内に株主総会の招集の通知が発せられない場合、請求した株主は裁判所に申立てを行い、許可を得ることで株主総会を招集することができます。

この権利は、公開会社の場合は、総株主の議決権100分の3以上の議決権を6ヶ月前から引き続き有する場合に行使できます。
なお、非公開会社の場合は、「6ヶ月前から引き続き有する」という要件がありません。

株主総会における少数株主の権利のまとめ

経営陣や大株主の意向を優先した経営により株主が不利益を被らないよう、少数株主にも一定の権利が認められています。
少数株主の権利を理解しておくことで、不利益を被ったり会社からの不当な扱いを受けたりすることを防ぐことができる可能性があります。
ただ実際に権利行使するには、手続きに関する法的知識が必要となります。
手続きを行う際は、弁護士に相談し、適切なサポートを受けることをお勧めします。