非上場株式を会社が買い取ってくれない!株式相続をしたら巨額の相続税が発生してしまう!

非上場株式を会社が買い取ってくれない!株式相続をしたら巨額の相続税が発生してしまう!

企業をオーナー経営している場合、そのオーナーの遺産の内訳がほぼ自社株というケースがあります。

家族や親族が会社の非上場株式である自社株を相続すると多額の相続税がかかるため、相続人が「相続税を支払う余裕がない」「相続税に充てる現金をプールしていない」と頭を抱えることもあるのです。最悪のケースで待っているのは相続人の破産です。

企業の非上場株式の相続にはどのようなデメリットや問題点があるのでしょうか。また、非上場株式の相続の問題やデメリットを解決するためにはどのような対処法があるのでしょう。

  • 非上場株式を相続するデメリット
  • 非上場株式の問題点
  • 非上場株式相続の解決策

この記事では、非上場株式問題に精通する弁護士が非上場株式相続について徹底解説いたします。

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非上場株式を相続するデメリット

相続にはプラスの印象があるかもしれません。しかし、遺産の内容によっては相続人のプラスになるどころか相続による負担が大きく、相続により相続人が困るケースがあります。非上場株式の相続が代表例です。

なぜ非上場株式の相続で相続人が困るのでしょうか。

実は、非上場株式の相続には以下のふたつのデメリットがあるのです。ふたつのデメリットにより、非上場株式を相続してしまった相続人が一気に困窮し、最悪のケースでは生活に行き詰まる可能性まで出てきます。

非上場株式は相続時に巨額の相続税が発生する

非上場株式には相続時に巨額の相続税が発生するケースが少なくありません。

たとえば中小企業を経営していた父親が亡くなり、遺産のほとんどが会社の非上場株式だったとします。相続税の計算をするときは非上場株式の価値評価をしたうえで相続税の計算を行うという流れです。

長年経営してきた企業などは相続税評価が高額になる傾向にあります。相続税を計算する際の非上場株式の評価が高くなれば、それだけ相続税額も高額になります。

企業の経営状況や利益などによっても相続税評価が変動するため、被相続人が会社経営に尽力した結果、相続税評価が高くなってしまい皮肉にも相続人を苦しめてしまうのです。

相続人が企業の非上場株式を相続しても相続税の支払いに困らないほど潤沢な現金を持っているケースならいいかもしれません。

ただ、多くの場合は遺産に占める非上場株式の割合が多く、現金は乏しいというケースです。中には相続税が数千万円や場合によっては数億円以上になるケースもあるため、相続人が困らずに納税できるケースはほぼありません。そのため、相続人は巨額の相続税に苦慮する結果になるのです。

相続税の計算の際に非上場株式の価値評価を行った結果、多額の相続税が発生する可能性が高くなり、そして、多くのケースでは相続税支払いに充てる現金がないため相続人が困る。

これが、非上場株式を相続する第一のデメリットです。

この第一のデメリットについて、事例をふたつご紹介します。

非上場株式の相続と相続税の事例①

被相続人が亡くなり、相続人は非上場株式を相続しました。このときの相続税は1,000万円でした。

相続人が亡くなり、次の相続人が非上場株式を相続したところ、会社の経営状況が以前より良好になっていたため非上場株式の評価がアップし、税務署側の判断はなんと2億円。相続税として相続人には8,000万円もの金額が請求されました。

相続人が受け取った遺産には預金や現金はなかったため、納税には自分のお金を充てるしかありません。しかし、8,000万円もの金額はなく相続税の支払いができませんでした。

払えないから「払いません」では済みません。相続人はお金をかき集めて相続税を支払いましたが、結果、自分の生活に困るようになりました。

非上場株式の相続と相続税の事例②

被相続人が遺した財産は自宅(不動産)と非上場株式である自社株だけです。

相続人は相続税申告の準備のために被上場株式の評価を行ったところ、非上場株式の評価額が高く、相続税だけで数千万円から1億円はかかるという判断でした。被相続人は現金や預金を残していなかったため、相続人の資産で払わなければいけません。しかし、相続人にもそれだけの現金ストックはありませんでした。

相続人は不動産の売却や株式売却によって現金を作ろうとしましたが、不動産や株式はなかなか売れません。また、自宅は売却しても相続税の支払い分には遥かに満たないという結果です。

相続人は非上場株式の相続により、相続税の支払いに苦慮する結果となりました。

非上場株式で相続税の物納ができない

相続税の支払いは基本的に現金による一括払いです。しかしながら相続は被相続人の死によって唐突に発生することから現金をストックしていないことも考えられます。相続税の現金一括納付が難しい場合は「物納」という方法があります。相続税の物納とは、現金納付にかえて物で相続税を支払う方法です。

非上場株式の相続で相続税に困ったら非上場株式を物納すればいいのではないかと思うかもしれません。非上場株式そのものを物納すれば相続税問題も、物納の問題点(次の見出しで解説)も片付くので、一石二鳥とも思うかもしれません。しかし、そう上手くはいきません。非上場株式の物納は極めて難しいのです。

物納を認めてもらうためには、以下の条件を満たす必要があります。

・物納のルールに沿っているか・金銭で支払えるのではないか・金銭のかわりにする物は何か

物納については相続税法41条に定められています。

第四十一条税務署長は、納税義務者について第三十三条又は国税通則法第三十五条第二項(申告納税方式による国税等の納付)の規定により納付すべき相続税額を延納によつても金銭で納付することを困難とする事由がある場合においては、納税義務者の申請により、その納付を困難とする金額として政令で定める額を限度として、物納の許可をすることができる。

物納の申請をしたからといって必ず許可されるわけではなく、税務署が認めてはじめて物納が許されるのです。物納したくても税務署が許さなければ物納自体ができません。

非上場株式自体は物納の対象になります。ただ、物納の対象になる物として非上場株式の優先度は低くなっているのです。物納の際は順位1位の物が優先され、1位の物がなければ順位2位の物が物納の対象になります。

順位1位 / 不動産、上場株式、国債 など順位2位 / 非上場株式 など順位3位 / 動産

物納の優先順位はこのようになっています。

日本の相続ケースでは不動産が含まれている可能性が高いため、物納を申請しても「不動産があるなら不動産を物納」という話になってしまうのです。

また、非上場株式は管理処分不適格財産に該当するという理由から物納を申請しても許可されない可能性もあります。譲渡制限がついている株式などが管理処分不適格財産に該当します。

非上場株式の物納は不可能とまでは言いません。ですが、相続において順位1位の財産を有しているケースや物納対象として不適格と判断される可能性が高いことから、物納は極めて難しいのが現実になっています。よって、非上場株式を相続した際は物納には頼れず、別の方法で相続税に対処する必要があるのです。

非上場株式の相続では物納による対処が難しい。

以上が非上場株式相続の第2のデメリットになります。

非上場株式の問題点

仮に相続税を払って非上場株式を所持し続けるとしても、非上場株式を所持し続けること自体にも問題点があります。非上場株式を所持する以上、相続人は以下の問題により負担がかかることを覚悟しなければならないのです。

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非上場株式を現金化しようとしても極めて難しい

非上場株式を売却して相続税を払いたい。非上場株式を所持し続けていたが負担が重いため売却したい。相続人がこのように考えても、非上場株式の売却は極めて難しいという事情があります。

非上場株式は市場で売買されていません。そのため、上場株式のように市場で取引できないのです。市場で取引できないため、以下のふたつの方法が現金化の主な手法になります。

・自分で非上場株式の買い手を見つける・非上場株式を会社に買い取ってもらう

ひとつ目は非上場株式の買い手を自分で見つける方法です。この方法の問題点は「買い手が見つからない可能性があること」と「非上場株式の発行会社が売買を認めない可能性があること」になります。

非上場株式は市場で流通していませんので、株式の売買益を求める投資家などには売り込みにくいという欠点があります。そのため、対象は同社の株を持っている他の株主や経営権を狙っている投資家などになるのです。非上場株式を現金化したいときに都合よく買ってくれる相手が見つかるとは限りません。

また、仮に非上場株式の買い手が見つかっても、会社側が認めない可能性があります。会社が認めない場合は買取請求をする方法が考えられますが、会社は請求を拒否する可能性があるのです。会社側とトラブルになる可能性もあります。

このように、非上場株式の現金化は難しく、売るに売れずに塩漬けになるという問題点があります。

非上場株式の相続問題は多くの人の身近な問題である

日本に数ある会社のうち、市場に上場している会社はたった0.2%しかありません。日本の会社の99.8%は非上場会社、つまり市場での株式売買が難しい会社なのです。日本の会社が100あれば、そのうちの99の会社は簡単に株式を売買できない会社ということになります。

経済産業省・中小企業庁の調査によると、日本の企業数は約421万社という結果です。個人事業主がそのうちの240万社を占めるといわれているため、中小企業などの会社は約170万社でしょうか。

中小企業などの会社が170万社あるということは、経営者も同じくらいの数いると考えて差し支えないはずです。仮にこの170万人の経営者が非上場株式を所持していたとしたらどうでしょう。170万人の相続の相続人ですから、莫大な数です。経営者以外の非上場株式の所持者とその相続人の数を考えると、さらに莫大な人数になるのではないでしょうか。

非上場株式の相続で困るという話はどこか遠い世界の話のように聞こえるかもしれません。非上場株式の相続は実に身近な問題です。

非上場株式を塩漬け状態で放置すると、今度は次の相続人が相続の際に相続税や現金化できないなどの問題に突き当たる可能性があります。現在の悩みの種である非上場株式が将来の孫子の悩みの種になる可能性も秘めているのです。

非上場株式を持っていても配当金に期待できない

株式を持っていれば配当の対象になるため、非上場株式の所持でもそれなりに利益が期待できると思うかもしれません。しかし実際は、非上場株式の配当にはほぼ期待できないのです。

株式の配当は株主総会に左右されます。非上場株式の場合は支配権を持っている株主は被相続人の親族や家族などのケースが多くなっているため、配当が親族や家族など有力な存在に左右されてしまうのです。配当額が少なくほぼ利益を得られない場合や、配当自体がない場合もあります。

非上場株式は市場に流通していないので、配当を魅力的にして自社に投資してもらう意味がなく、配当に消極的なケースもあります。

非上場株式を所持し続けても配当などによるリターンは期待できないという問題点があるのです。

非上場株式の少数株主は経営に対する影響力もない

非上場株式を持っていると、その株式を発行した中小企業の経営に関与できるのではないかと思うかもしれません。しかし、経営権を得るためには議決権のある株式の2分の1超を所持する必要があるため、相続人にとってハードルが高いものです。非上場株式を所持していても議決権数によっては、相続人が経営に関わることはほぼできず、メリットがありません。

仮に議決権のある2分の1超の株式を持っている場合や、それに近い株式を所持している場合は会社の経営権争いに巻き込まれる可能性もあります。経営に特に興味のない相続人や、被相続人がたまたま会社を経営していたなどのケースでは、経営権争いに巻き込まれて困惑し早く非上場株式を手放したいと思うかもしれません。

非上場株式を持っているからといって即座に経営に関われるわけではありません。加えて経営をめぐる争いに巻き込まれるといった問題点も無視できないのです。

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経営に関与できなければ事業承継税制の適用や繰り延べも不可

最近、事業承継税制というものが導入され、非上場株式の相続税が免除になる(相続税が繰り延べになる)、との報道を聞いたことがある方もいると思います。

しかし、非上場株式・少数株式を相続した場合、この事業承継税制は、たいてい適用されないのです。

非上場株式を相続して経営に関与できなければ事業承継税制の適用を受けられず繰り延べも不可となってしまうのです。

事業承継税制は事業の継続を前提として相続税や贈与税が優遇される制度になります。しかし適用には細かな条件があるのです。そもそもの目的が事業継続を前提にしていますから、事業継続とは関係のない相続人については、制度の目的から外れてしまうと適用されない他、納税猶予の取り消しといったリスクもあります。

税金の優遇措置は使えず、手放したくても売却できず、非上場株式の相続税負担だけが残る。これが非上場株式を相続した場合の問題点です。

非上場株式相続の解決策

非上場株式には相続税の問題があり、仮に相続税問題をクリアしたとしても、所持にはデメリットがともないます。そのため、非上場株式の問題へ対処する術がさらなる問題になるのです。

非上場株式の相続税や相続の問題にはどのような方法で対処したらいいのでしょうか。

非上場株式相続の一番の解決策は相続発生前に処分すること

非上場株式の相続や所持のデメリットの最大の解決策は相続発生前に非上場株式を処分することです。

処分の方法として代表的なものは売却になります。

非上場株式を売却する場合は第三者である買い手を見つける他、会社との任意交渉や民事調停により売却を進める方法もあります。

非上場株式を第三者に売却する

非上場株式を第三者である買い手に売却するという方法があります。

しかし、この方法には難点があるのです。非上場株式は売却益などを求める投資家にはあまりメリットがありません。市場で自由に売買できないからです。配当によるリターンを求める投資家や株主優待を求める投資家などにとっても魅力は乏しいといえます。

結果、同じ株主や経営権に興味のある投資家などへの売却が考えられますが、すでにお話しした通り売却がスムーズに進むとは限りません。思い通り売却できない可能性が高いのです。

会社に買取請求しても会社側が買取に応じるとも限らないため、売却が難しいという結論です。

非上場株式を任意交渉で売却する

この方法は弁護士などの専門家のサポートを受けて会社と任意交渉を行い非上場株式を買い取ってもらう方法になります。

会社が非上場株式の買取にメリットを感じれば、交渉により買取に応じてもらえる可能性があるのです。ただ、会社には株式買取の義務がないため、交渉しても応じてもらえないこともあります。会社側が交渉に応じる可能性がある場合は、会社に任意で応じてもらうかたちで解決可能です。

なお、非上場株式を会社との任意交渉で買ってもらうときは買値に注意が必要になります。会社側には任意交渉に応じる義務も、非上場株式を買う義務もありません。そのため、買い取ってもらえる場合の買い値は会社側が主張する買い値になる可能性があります。

会社は買う側ですから、当然ですができるだけ安く買いたいと考えます。非上場株式を可能な限り高値で買取して欲しい場合や「いくら以上で買って欲しい」という希望がある場合は注意してください。

非上場株式の売却に民事調停を使う

非上場株式の売却に民事調停を利用するという方法もあります。民事調停には強制力はありません。ですが、強制力がないからといって非上場株式の問題解決に使えないわけではないのです。

民事調停では非上場株式の買取の話し合いについて裁判官が介入します。裁判官が介入することによって事態が良い方向に動く可能性もあるのです。ただ、裁判官が間に入ってくれたからといって、非上場株式の所持者に有利なよう取り計らってくれるというわけではないため注意が必要になります。

ただし、民事調停は、当事者の任意の合意を基本としていることもあり、非上場株式の適正価格より売却価格は低くなりがちな点にも注意してください。

非上場株式の相続対策をしっかりと考える

非上場株式の相続対策を事前にしっかりと行うことが重要です。

たとえば相続人が何も知らずにいきなり非上場株式を相続してしまえば、高額な相続税の支払いに苦慮することでしょう。しかし、事前に分かっていたらどうでしょう。非上場株式の相続についての相続人の意思確認や相続税支払いの準備、他の遺産と合わせた対策などができるはずです。相続人や被相続人の意思によっては、迅速に非上場株式の売却処分ができるかもしれません。

相続発生前に非上場株式も含めて相続対策しておくことが重要です。

最後に

非上場株式は市場で売却できず相続の際は多額の相続税がかかるなど、問題点やデメリットのある株式になります。

特に相続税の問題は深刻です。配当や経営権などの魅力がないから相続税評価が低いだろうと思いがちですが、非上場株式は評価が高くなりやすいため、相続税額も高額になりがちです。非上場株式を相続した結果、相続税の支払いに相続人が苦慮したり、相続税の支払いのために虎の子の手持ち資産を売却したり、相続税の支払いのために相続人が困窮したりするケースは少なくありません。

非上場株式の問題を解決するための最大の対処法は、早めに売却することです。相続発生の前の段階で非上場株式を売却してはいかがでしょう。

非上場株式の売却の際の方法や手続きに困ったら、まずは専門家に相談することをお薦めします。

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