株式譲渡承認請求における株式買取代金の財源規制!

株式譲渡承認請求における株式買取代金の財源規制について

会社法上、自己株式の取得については、財源規制があります。

この財源規制ですが、無制限に自己株式を取得することを許すと、実質的に資本充実の原則・資本維持の原則が確保できず、会社財産を毀損し、債権者に不慮の損害を与える可能性があるため、自己株式の取得にはこのような「財源規制」がなされているのです。

株式譲渡承認請求による株式買取についても、この「財源規制」の適用があります。

会社法461条1項1号では、「第百三十八条第一号ハ又は第二号ハの請求に応じて行う当該株式会社の株式の買取り」として、株式譲渡承認請求による株式買取に、この「財源規制」の適用があることが明示されています。

株式会社は譲渡承認請求者からいつ譲渡承認請求されるかわからないため(いつ株式を買い取る義務が発生するかわからないため)、この「財源規制」の適用があると、不慮の事故で、株式を買い取ることができなくなってしまいかねませんので、やや酷な規定のようにも思われます。

ただ、そのような場合は、最悪、会社から指定買取人に対いて、資金を貸付し、指定買取人が株式を買い取ることができます。指定買取人は自己株式の取得をするわけではありませんので、「財源規制」の適用がないのはもちろんのことです。

ただ、多額の資金を借り入れてまで会社の株式を購入したい指定買取人が見つからないことも多いと思われ、そのような場合、株式会社としては、やむなく、譲渡承認請求者による譲渡承認請求を承認せざるを得ないということとなります。

反対に、譲渡承認請求者としても、譲渡承認請求を行っても、対象株式の株価が非常に巨額となり、会社が「財源規制」の要件を満たすことができない場合は、確実に譲渡承認請求を承認するであろう、ということは事前に認識することができるかと思われます。

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参考:会社法

(配当等の制限)
第四百六十一条 次に掲げる行為により株主に対して交付する金銭等(当該株式会社の株式を除く。以下この節において同じ。)の帳簿価額の総額は、当該行為がその効力を生ずる日における分配可能額を超えてはならない。
一 第百三十八条第一号ハ又は第二号ハの請求に応じて行う当該株式会社の株式の買取り
二 第百五十六条第一項の規定による決定に基づく当該株式会社の株式の取得(第百六十三条に規定する場合又は第百六十五条第一項に規定する場合における当該株式会社による株式の取得に限る。)
三 第百五十七条第一項の規定による決定に基づく当該株式会社の株式の取得
四 第百七十三条第一項の規定による当該株式会社の株式の取得
五 第百七十六条第一項の規定による請求に基づく当該株式会社の株式の買取り
六 第百九十七条第三項の規定による当該株式会社の株式の買取り
七 第二百三十四条第四項(第二百三十五条第二項において準用する場合を含む。)の規定による当該株式会社の株式の買取り
八 剰余金の配当
2 前項に規定する「分配可能額」とは、第一号及び第二号に掲げる額の合計額から第三号から第六号までに掲げる額の合計額を減じて得た額をいう(以下この節において同じ。)。
一 剰余金の額
二 臨時計算書類につき第四百四十一条第四項の承認(同項ただし書に規定する場合にあっては、同条第三項の承認)を受けた場合における次に掲げる額
イ 第四百四十一条第一項第二号の期間の利益の額として法務省令で定める各勘定科目に計上した額の合計額
ロ 第四百四十一条第一項第二号の期間内に自己株式を処分した場合における当該自己株式の対価の額
三 自己株式の帳簿価額
四 最終事業年度の末日後に自己株式を処分した場合における当該自己株式の対価の額
五 第二号に規定する場合における第四百四十一条第一項第二号の期間の損失の額として法務省令で定める各勘定科目に計上した額の合計額
六 前三号に掲げるもののほか、法務省令で定める各勘定科目に計上した額の合計額