裁判所における非上場株式・少数株式の株式価値の算定方法は?

裁判所における非上場株式・少数株式の株式価値の算定方法は?

裁判所の非上場株式・少数株式の株式価値の評価方法

では裁判所は、どのようにこの非上場株式・少数株式株式売買価格を決定するのでしょうか。
この点、確定的な判例は存在しないものの、現在では、おおむね、次のように非上場株式・少数株式株式売買価格が決定されるようになってきています。
すなわち、①株式を売却・処分しようとしている株主にとっての株式価値評価額と、②株式を買取・取得しようとしている会社又は指定買取人にとっての株式価値評価額の平均を取るのです。

株主も会社や指定買取人も非上場株式・少数株式の株式売買当事者ということで「対等」ということで、両者の株式価値の平均を取ることとなっています。
ですので、極端な例ですが、株主にとって0円の株式であっても、会社にとって10000円の株式であれば、両者の平均を取って、株式価値評価額は5000円となるのです。

なお、指定買取人は会社と同一の立場にあるものとして評価されます。会社から買取人として指定されているのですから、会社と同一の立場とみなすことが適切だということです。

⇒非上場株式・譲渡制限株式・少数株式でお困りの方はこちら!

株式価値評価額はどのように算定するのでしょうか。

裁判所では、主要な株式価値評価算定方法として、(A)収益還元法(DCF法)、(B)時価純資産法、(C)配当還元法(実質的配当還元法)、を考えているようです。

株式評価額(相続税評価額)を算定する際、税法上は、(あ)純資産法、(い)類似業種批准法、(う)配当還元法(形式的配当還元法)を採用し、これらの加重平均又は最低額を選択することができますが、株式評価額(相続税評価額)は課税をする際の便宜的な制度であり、実態を表しているものではありませんので、裁判所ではまったく採用されることはありません。

そして、裁判所では、支配株主にとっての株式価値評価額の算定方法として、(A)収益還元法(DCF法)及び(B)時価純資産法を採用し、一般株主にとっての株式価値評価額の算定方法として、(C)配当還元法(実質的配当還元法)を採用し、支配株主でも一般株主でもない中間的株主については、その程度を具体的に検討し、支配株主にとっての株式価値評価額と一般株主にとっての株式価値評価額を加重平均して、株式価値評価額を決定します。中間的株主でも、どちらかというと支配株主の親族など支配株主に近いのであれば支配株主に近いものとして加重平均し、どちらかというと一般株主に近いのであれば一般株主に近いものとして加重平均して、株式価値評価額を決定します。

配当還元法でも高値が付きます

また、(C)配当還元法(実質的配当還元法)についても、株式評価額(相続税評価額)における配当還元法(形式的配当還元法)のようにひどくはありません。

配当金額についても、実際の配当金額ではなく、その会社にとって本来行うべき配当性向(配当比率)による配当を実施したことと仮定して、配当還元法を適用します。

今後は、この仮定において配当しなかった残金を再投資に回したと仮定して会社が成長しさらに配当が増加する前提で配当還元法を適用するという株式価値評価額の算定方式が主流になってゆくものと推測します。

以上の通りですので、株主としては、裁判所に対して、非上場株式・少数株式株式売買価格決定の申立を行うことができれば、悪い結果にはならないものと思われます。

参考:会社法

(売買価格の決定)
第百四十四条  第百四十一条第一項の規定による通知があった場合には、第百四十条第一項第二号の対象株式の株式売買価格は、株式会社と譲渡等承認請求者との協議によって定める。
2  株式会社又は譲渡等承認請求者は、第百四十一条第一項の規定による通知があった日から二十日以内に、裁判所に対し、株価決定申立をすることができる。
3  裁判所は、前項の決定をするには、譲渡等承認請求の時における株式会社の資産状態その他一切の事情を考慮しなければならない。
4  第一項の規定にかかわらず、第二項の期間内に同項の申立てがあったときは、当該申立てにより裁判所が定めた額をもって第百四十条第一項第二号の対象株式の株式売買価格とする。
5  第一項の規定にかかわらず、第二項の期間内に同項の申立てがないとき(当該期間内に第一項の協議が調った場合を除く。)は、一株当たり純資産額に第百四十条第一項第二号の対象株式の数を乗じて得た額をもって当該対象株式の株式売買価格とする。
6  第百四十一条第二項の規定による供託をした場合において、第百四十条第一項第二号の対象株式の株式売買価格が確定したときは、株式会社は、供託した金銭に相当する額を限度として、売買代金の全部又は一部を支払ったものとみなす。
7  前各項の規定は、第百四十二条第一項の規定による通知があった場合について準用する。この場合において、第一項中「第百四十条第一項第二号」とあるのは「第百四十二条第一項第二号」と、「株式会社」とあるのは「指定買取人」と、第二項中「株式会社」とあるのは「指定買取人」と、第四項及び第五項中「第百四十条第一項第二号」とあるのは「第百四十二条第一項第二号」と、前項中「第百四十一条第二項」とあるのは「第百四十二条第二項」と、「第百四十条第一項第二号」とあるのは「同条第一項第二号」と、「株式会社」とあるのは「指定買取人」と読み替えるものとする。