株式譲渡承認又は拒否の際の会社の意思決定方法及び通知期限について!!!

株式譲渡承認又は拒否は取締役会決議事項

会社においては、株式譲渡の承認又は拒否の決定は、原則として、取締役会において行われます。

取締役の数は、それほど多くないと思われますので、取締役会の決定は、スムーズに行うことができます。

会社は、株式買取請求権者に対して、この株式譲渡の承認又は拒否の決定に関する通知を、株式譲渡承認請求から「2週間以内」に行う必要があります。

「2週間以内」にこの通知を行わなかった場合は、株式譲渡を承認したとみなされてしまいますので、急いで対応する必要があります。

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自己株式取得の株主総会決議に時間がかかる

しかし、株式買取請求を拒否する場合で、会社がその株式を自己株式として取得する場合は、会社は、株主総会において、以下の事項を決定する必要があります。

①  対象株式を買い取る旨
②  買い取る対象株式の数

この株主総会の開催に時間がかかります。すなわち、会社法上、株主総会を開催するためには、原則として、1週間前の株主総会招集が必要となります。また、通常、株主総会など開催したことがない中小企業にとっては、株主総会招集通知を作成して、株主各位に発送するためでもかなりの手間であり、さらに、この株主総会招集通知を、その問題となっている、株式買取請求を行ってきた株主に対しても送付しなければいけません。

当該株主から、株主総会招集通知が法令の要件を満たしていないとか間違っているとか指摘されて更なるトラブルに発展しても困りますので、慎重かつ正確な作業が必要となります。

ただし、この株主総会の決議は上記の株式譲渡の承認又は拒否の決定に関する通知から「40日」以内に行わなければいけません。

「40日」と言いますと、5-6週間ありますので、株主総会を開催することは時間的に問題ないと思われるかもしれませんが、自己株式の取得に関する株主総会の承認を得られない場合、指定買取人を探す必要が発生しますし、株式譲渡代金の供託(日本銀行への供託)をも行う必要がありますし、そもそもその株式譲渡大金の金額を資金調達する必要もありますので、必ずしも時間はありません。

特に、上記の株式譲渡の承認又は拒否の決定に関する通知は重大な意思決定ですので、経営者としては、それで疲れ果てますので、その後、1週間はお休みを取ると仮定して、株主総会招集通知等の作成や弁護士との打ち合わせで1週間かかり、株主総会招集通知を発送して1週間後に株主総会を開催するとして、すでに20日は経過していますので、迅速に準備する必要があることは言うまでもありません。

指定買取人が株式を買い取る場合

なお、指定買取人が株式を買い取る場合は、株主総会を開催する必要はありません。

参考:会社法

(譲渡等の承認の決定等)
第百三十九条  株式会社が第百三十六条又は第百三十七条第一項の承認をするか否かの決定をするには、株主総会(取締役会設置会社にあっては、取締役会)の決議によらなければならない。ただし、定款に別段の定めがある場合は、この限りでない。
2  株式会社は、前項の決定をしたときは、譲渡等承認請求をした者(以下この款において「譲渡等承認請求者」という。)に対し、当該決定の内容を通知しなければならない。
(株式会社又は指定買取人による買取り)
第百四十条  株式会社は、第百三十八条第一号ハ又は第二号ハの請求を受けた場合において、第百三十六条又は第百三十七条第一項の承認をしない旨の決定をしたときは、当該譲渡等承認請求に係る譲渡制限株式(以下この款において「対象株式」という。)を買い取らなければならない。この場合においては、次に掲げる事項を定めなければならない。
一  対象株式を買い取る旨
二  株式会社が買い取る対象株式の数(種類株式発行会社にあっては、対象株式の種類及び種類ごとの数)
2  前項各号に掲げる事項の決定は、株主総会の決議によらなければならない。
3  譲渡等承認請求者は、前項の株主総会において議決権を行使することができない。ただし、当該譲渡等承認請求者以外の株主の全部が同項の株主総会において議決権を行使することができない場合は、この限りでない。
4  第一項の規定にかかわらず、同項に規定する場合には、株式会社は、対象株式の全部又は一部を買い取る者(以下この款において「指定買取人」という。)を指定することができる。
5  前項の規定による指定は、株主総会(取締役会設置会社にあっては、取締役会)の決議によらなければならない。ただし、定款に別段の定めがある場合は、この限りでない。⇒非上場株式・譲渡制限株式・少数株式でお困りの方はこちら!
(株式会社が承認をしたとみなされる場合)
第百四十五条  次に掲げる場合には、株式会社は、第百三十六条又は第百三十七条第一項の承認をする旨の決定をしたものとみなす。ただし、株式会社と譲渡等承認請求者との合意により別段の定めをしたときは、この限りでない。
一  株式会社が第百三十六条又は第百三十七条第一項の規定による請求の日から二週間(これを下回る期間を定款で定めた場合にあっては、その期間)以内に第百三十九条第二項の規定による通知をしなかった場合
二  株式会社が第百三十九条第二項の規定による通知の日から四十日(これを下回る期間を定款で定めた場合にあっては、その期間)以内に第百四十一条第一項の規定による通知をしなかった場合(指定買取人が第百三十九条第二項の規定による通知の日から十日(これを下回る期間を定款で定めた場合にあっては、その期間)以内に第百四十二条第一項の規定による通知をした場合を除く。)
三  前二号に掲げる場合のほか、法務省令で定める場合