株式譲渡制限会社の特徴!

株式譲渡制限会社とは「非公開会社」とも呼ばれ、発行されている株式を自由に譲渡することができない会社のことを言います。

通常、会社に出資した株主は、対価として受け取った株式を自由に売買などの手段で譲渡することができます。

しかし、株式譲渡制限会社では、株式を売買などの手段で譲渡する場合に会社の承認が必要です。

このように株式の売買に制限がある株式譲渡制限会社は、一見不便なのでデメリットだらけに見えますが、会社にとってはいろいろなメリットがあります。

今回は株式譲渡制限会社の特徴や、メリットデメリットについて詳しく解説していきます。

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株式譲渡制限会社になるためには?

株式譲渡制限会社になるためには、すべての株式の譲渡に対し会社の承認が必要なことを定款に記載しなければなりません。

このことを、株式の譲渡制限に関する規定といいます。

この場合の会社の承認とは原則として取締役会の承認となりますが、取締役会を設置していない場合もありますので、その期間の承認は原則として株主総会になります。

また、代表取締役や取締役全員の承認なども、定款に記載することで会社の承認とすることができます。

このように、定款に会社の承認とは何かを具体的に記載しておくことにより、実際に売買する時に誰の承認が必要なのかが分かりやすくなります。

さらに、株式譲渡制限会社になるには、すべての株式の譲渡を制限することを定款に記載しなければなりません。

一部の株式の譲渡の制限では、株式譲渡制限会社にはなれないのです。

会社が株式譲渡制限会社になることを選択して定款に記載するためには、株主総会で議決権を有する株主の過半数、且つ株主の議決権の3分の2以上の賛成の特殊決議が必要です。

株式譲渡制限会社と公開会社の違い

株式譲渡制限会社とは、非公開会社とも呼ばれるように株主が株式を第三者に譲渡をする場合に会社の承認が必要になる会社のことを言います。

背景としましては、平成18年に新会社法が施行されて有限会社制度が廃止になりました。

このため、新たな有限会社の設立はできなくなり、会社の設立は株式会社に一本化されました。

元々、有限会社は株式会社よりも信用度が低いというデメリットがあったため、中小企業であっても株式会社に形態変更する会社が増えていったという事情もあります。

そのため、実態には有限会社と変わらない株式が増えたのです。

そして新会社法で株式譲渡制限会社は、株式会社でありながら有限会社に準じた中小企業向けの簡易な規制を選択することができるのです。

一方、公開会社は、株主が自分の持っている株式を自由に第三者に譲渡することができます。

公開会社と言えば上場会社のことだと考える人がいるかもしれませんが、必ずしもそうではありません。

上場会社とは、公開会社の中でも株式が証券取引所で自由に売買される会社のことです。

上場会社以外の公開会社の株式は証券取引所での取引ができないため、公開会社といっても株式を入手するのが困難であることが実情です。

株式譲渡制限会社であることのメリット

株式譲渡制限会社には、公開会社には無い色々なメリットがあります。

以下は、株式譲渡制限会社であることのメリットです。

取締役会の設置義務がないこと

公開会社では取締役3人以上で監査役1人以上が必須で、取締役会を設置する必要があります。

しかし、株式譲渡制限会社では、監査役はいなくても問題なく取締役が1名以上いれば取締役会を設置する必要もありません。

請求がなければ株券を発行する必要がないこと

公開会社では株式を発行した場合は、遅滞なく株券を発行しなければなりません。

一方、株式譲渡制限会社では、株主からの株券の発行の請求が無い場合は株券を発行しなくても良いことになっています。

株式の発行についての制限がないこと

公開会社では、原則発行済の株式数の4倍までしか株式の発行可能数を設定することができません。

一方、株式譲渡制限会社では、株式の発行数についての制限がありません。

役員の任期を最大10年まで延長できること

通常では、取締役の任期は最長2年、監査役は最長4年となっています。

しかし、株式譲渡制限会社では、定款に定めることにより役員の任期を最長10年まで延長することができます。

役員の退任や就任や登記の変更などの手続きの回数を減らすことができるため、コストの削減が可能です。

株主総会の招集期間が短縮できるため手続きが楽になること

公開会社の場合は、株主総会が開催される2週間前までには株主に通知をしなければならないと会社法により決まっています。

一方、株式譲渡制限会社の場合は、株主総会が開催される1週間前までに通知をすれば良いのです。

さらに、取締役会を設置していない株式譲渡制限会社であれば、定款に定めればさらに短い時間での通知が可能であると共に、口頭での通知も認められています。

株式の大量保有による乗っ取りが防げること

第三者に株式を大量に持たれると、株主総会での影響力が第三者に渡り場合によっては会社を乗っ取られることになります。

株式譲渡制限会社の場合は株式の売買に会社の承認が必要なため、会社の意思に反する人が株式を保有することを防ぐことができます。

相続による株式の分散やクーデターなどが防げること

株式譲渡制限会社では、定款に記載していれば相続によって相続人に移転した株式を売却してもらうことができます。

このことを株式の売渡請求と言い、株主総会の特別決議で決定することができます。

このため、相続による株式の分散を防ぐことができると共に、会社の意思に反する人に株式が渡ることを防ぐことができます。

計算書類の作成が楽になること

株式譲渡制限会社の場合は、計算書類に記載しなければならない注記を簡略化することができます。

株式に譲渡制限の無い株式会社の場合に記載しなければならない注記は以下の19項目になります。

①継続企業の前提に関する注記

②重要な会計方針に係る事項に関する注記

③会計方針の変更に関する注記

④表示方法の変更に関する注記

⑤会計上の見積もりの変更に関する注記

⑥誤りの訂正に関する注記

⑦貸借対照表等に関する注記

⑧損益計算書に関する注記

⑨株主資本等変動計算書に関する注記

⑩税効果会計に関する注記、

⑪リースにより使用する固定資産に関する注記

⑫金融商品に関する注記

⑬賃貸等不動産に関する注記

⑭持ち分損益等に関する注記

⑮関連当事者との取引に関する注記

⑯1株当たり情報に関する注記

⑰重要な後発事象に関する注記

⑱連結配当規制適用会社に関する注記

⑲その他の注記

株式譲渡制限会社の場合は上記19項目の注記の内、計算書類に注記する内容は以下に6項目に簡略化されます。

②重要な会計方針に係る事項に関する注記

③会計方針の変更に関する注記

④表示方法の変更に関する注記

⑥誤りの訂正に関する注記

⑨株主資本等変動計算書に関する注記

⑲その他の注記

後継者に株式を集中しやすくできること

事業を後継者に継承する時に後継者が強い発言力を持つためには、株式をどれだけ持っているかが重要なポイントです。

株式譲渡制限会社であれば他の第三者に株式が渡りにくく、後継者に株式を集中しやすくできるのです。

また、後継者が株式を相続し相続税に苦しんだとしても、後継者の発言力を削がない程度に会社が買い取ってあげやすいという利点もあります。

株式譲渡制限会社での株式の売買は会社が承認をすれば良いため、後継者は株式を売ったお金を相続税の支払いに充てることができるのです。

取締役を株主の中からしか選べないようにできること

基本的に会社は健全経営のためにも、取締役は株主だけに限らず幅広く優秀な人を選ぶのが良いと言われています。

しかし、株式譲渡制限会社を選択するようなあまり大きくない会社は、同族だけで経営をしたいなどと考えるところも多いでしょう。

株式譲渡制限会社の場合は、特例として定款に定めておけば取締役を株主の中からしか選べないようにすることができます。

役員人事を特定の株主だけで決めることができること

取締役や監査役などの役員人事は、基本的には株主総会で株主全員で決めることとなっています。

しかし、株式譲渡制限会社を選択するようなあまり大きくない身内や仲間で経営している会社などは、一定の人達が役員人事を決めたいと考える所もあるでしょう。

そのため、定款に定めておけば特例として特定の株主だけで役員人事を決定することができます。

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株式譲渡制限会社であることのデメリット

決算公告が必要であること

株式譲渡制限会社は、公開会社と同様に決算公告により決算期ごとに決算内容を公表する必要があります。

決算公告とは、会社が定款に定めた方法によって財務諸表を公表することです。

株主総会を開催する必要があること

株式譲渡制限会社は株式会社であるため、株式総会を開催する必要があります。

株主総会を行うことをすべての株主に通知しなければならないため、手間がかかります。

会社を乗っ取られる可能性があること

例えば、会社の代表者が亡くなった場合などに自分の子供を後継者として株式を相続させようとした場合でも、会社側は売渡請求を行使することができるのです。

つまり、代表者の子供への相続を拒否することができるということです。

そのため、後継者の予定だった代表者の子供が、会社から追い出され会社を乗っ取られる可能性もあるのです。

このように相続による乗っ取りのことを相続クーデターと言います。

相続クーデターを防ぐには、以下の対策をしておく必要があります。

保有している株式を持株会社に移行しておくこと

保有している株式を持つことを目的とした持株会社を作成することで、相続が起こらないようにします。

但し、株式を持株会社に現物出資することになるため、所得税がかかります。

拒否権付種類株式を発行しておくこと

拒否権付種類株式とは、株主総会で成立した決議であっても拒否することができるという権利を与えるもので別名「黄金株」と言います。

黄金株を発行しておけば、相続人は売渡請求権が可決されたとしても拒否することができるのです。

後継者に遺贈するという遺言書を書いておくこと

遺言による株式の遺贈であれば相続に当たらないため、定款に相続人に対する売渡請求権が定められていたとしても対象外になります。

株式譲渡制限会社の株式を実際に売買する場合

ここまで見てきた通り、株式譲渡制限会社の株式を売買するには会社の承認が必要です。

それでは、実際に株式譲渡制限会社の株式を売買する方法について解説していきます。

株式譲渡制限会社の株式を譲渡したいと考えた場合、まずは株式譲渡契約書のような書類を譲渡される側と作成します。

作成が完了したら、株式譲渡制限会社に対し株式譲渡の承認を請求します。

請求された会社側は、基本的には取締役会や株主総会を開催して株式譲渡を認めるかについて検討します。

また、定款に記載していれば取締役会や株主総会でなくても、代表取締役や取締役全員の承認で株式譲渡の可否を決定することもできます。

そして、取締役会や株主総会などにて会社側の承認を得ることができた場合、株式の第三者への譲渡が認められます。

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株式譲渡制限会社から公開会社へ変更する手続きについて

株式譲渡制限会社には、株式売買が簡単にできないなどのメリットがあります。

しかし、会社が発展していって株式市場に上場したいと考えた場合は、公開会社へ変更する必要があるのです。

公開会社へ変更する場合にしなければいけないことは、まずは発行株式の譲渡制限を廃止する必要があります。

定款に記載されている株式譲渡制限を廃止した場合、取締役や監査役の任期が自動的に満了になります。

そして、公開会社に変更するためには、取締役を3人以上専任して取締役会を設置しなければなりません。

また、監査役を1人以上専任する必要もあります。

株式譲渡制限会社から公開会社への変更するには、発行可能株式総数を変更しなければならない可能性もあります。

株式譲渡制限会社は株式の発行制限はありませんが、公開会社の発行可能株式総数は発行済株式総数の4倍までと決まっているのです。

そのため、発行済株式総数の4倍以上の発行可能株式総数を現在登記している場合は、発行可能株式総数の登記を変更する必要があります。

まとめ

株主が株式を第三者に譲渡をする場合に、自由に売買できず会社の承認が必要な会社のことを株式譲渡制限会社と言います。

株式譲渡制限会社である場合、以下のようなメリットが挙げられます。

  • 取締役会の設置義務がないこと
  • 請求がなければ株券を発行する必要がないこと
  • 株式の発行についての制限がないこと
  • 役員の任期を最大10年まで延長できること
  • 株主総会の招集期間が短縮できるため手続きが楽になること
  • 株式の大量保有による乗っ取りが防げること
  • 相続による株式の分散やクーデターなどが防げること
  • 計算書類の作成が楽になること
  • 後継者に株式を集中しやすくできること
  • 取締役を株主の中からしか選べないようにできること
  • 役員人事を特定の株主だけで決めることができること

一方、以下のようなデメリットもあります。

  • 決算公告が必要であること
  • 株主総会を開催する必要があること
  • 会社を乗っ取られる可能性があること

このように、株式譲渡制限会社であることにはメリットもデメリットもありますので、会社の特徴と良く合わせて決定することが大切です。

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