株式譲渡承認拒否に伴う株券の供託(会社から株券を発行してもらって供託することが必要ですがこれが容易ではありません!)

株式譲渡承認拒否に伴う株券の供託

株式譲渡承認請求者は、会社が株券発行会社の場合、①会社から会社が自己株式の取得を行う旨の通知を受け、株式譲渡代金(仮)の供託を証する書面の交付を受けた場合、又は、②指定買取人から指定買取人が株式の買取を行う旨の通知を受け、株式譲渡代金(仮)の供託を証する書面の交付を受けた場合、「1週間以内」に、株券を日本銀行に供託し、その旨を会社又は指定買取人に通知をする必要があります。

株式譲渡承認請求者が、「1週間以内」に、株券を日本銀行に供託することができなかった場合、会社又は指定買取人は、譲渡承認請求者との株式の売買を解消することができますので、株券及び株券の供託の手続きは、予め、よく準備しておく必要があるということになります。

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株券がない場合はどうすればよいのか

しかし、昨今の会社は、株券などは発行していないことが多いですので、株券を供託するように言われても困ってしまうと思います。

しかし、法律に株券の供託が求められている以上、株券の供託を行わなかった場合は、株式の売買を解消されてしまうだけです。

そもそも、昨今の会社では、株券発行会社ではなく、株券不発行会社であることが多いです。この点は、商業登記簿を取り寄せて確認をする必要があります。

また、株券発行会社であったとしても、株券をそもそも発行していない(株券不発行)か、株券を発行はしたものの会社にて保管する運用(株券不所持)となっている場合が多いと思います。

株券不発行の場合は、株券の新規発行を要請する必要があります。また、株券不所持の場合は、自己の株券が存在するはずですので再交付をしてもらう必要があります。

ただ、会社と株主がトラブルになっている場合など、会社が嫌がらせで株券の新規発行や株券の再交付を拒否したり引き延ばすこともままありますので、その可能性も踏まえて、株式譲渡承認請求をどのようなスケジュールで進めていくかを事前に考えておかなければいけません。

株券発行裁判を行う必要がある場合も!!

会社としては、非上場株式・少数株式の株主が、株式譲渡承認請求を行っても、株券を供託できなければ、株式買取請求株価決定申立株価決定裁判)を行うことができないことは分かっています。

ですので、会社としては、株券の発行を拒否して、事実上、非上場株式・少数株式の株主が、株式譲渡承認請求を行うことや、株式買取請求株価決定申立株価決定裁判)を行うことを、阻止しようという動きに出ます。

そのような場合、最終的には、非上場株式・少数株式の株主としては、会社に対して、株券発行裁判・株券引渡裁判を提起する必要が生じてしまいます。

非上場株式・少数株式の株主としては、会社の株主であることは明らかであり、会社に対して、株主名簿や確定申告書(別表二 「同族会社の判定に関する明細書」)の提出をさせることができれば、自らが株主であることは容易に立証はでき、株券発行裁判・株券引渡裁判で勝訴することは難しいことではありません。

また、株式は、特定物債権ではなく、種類物債権ですので、非上場株式・少数株式の株主としては、会社に対して、同種同量同等の物(株券)の引き渡しを要求することができるわけですので、株券引渡裁判で勝訴判決を得れば、強制執行することは難しいことではありません。

しかし、非上場株式・少数株式の株主としては、できる限り、直接強制による強制執行を行いたいのです。執行裁判所に対して、直接強制による強制執行を申し立て、執行官を伴って会社を訪問し、会社を捜索し、株券を発見し、強制的にその占有を取得することで、株券を確保したいところです。

直接強制による強制執行を行うことができるのであれば、速やかに株券を入手して、次のステップに進むことができるのです。

そのためには、会社が株券をすでに作成完了していないといけないわけです。

会社が株券を作成完了していない場合は、会社に対して、間接強制による強制執行を行うほかありません。執行裁判所に対して、間接強制による強制執行を申し立て、一日100万円?の罰金を課しつつ、会社に対して、速やかに、株券を作成して、引き渡すことを間接的に強制する強制執行手続きです。

ただ、会社に対して、間接強制による強制執行を行う場合は、会社に対する審尋の機会が設定されるなど、また、裁判手続きを行う必要があります。

これらの株券発行裁判・株券引渡裁判には、特段の論点が存在しない場合であっても、半年程度の時間がかかり、また、強制執行の手続きについても、直接強制による強制執行においては、執行官のスケジュールの確保にそれなりの日数が必要となり、間接強制による強制執行についても、会社に対する審尋などでそれなりの日数が必要となります。

また、直接強制による強制執行を行っても、想定の場所に会社の株券が保管されていなかったような場合は、強制執行が「空振り」に終わることとなり、やむをえず、間接強制による強制執行に移行することとなります。

なお、この間接強制による強制執行における罰金ですが、会社に対して株券の発行・株券の引渡を強制することができる程度の金額が設定されることとなりますので、それなりの高額の金額が設定されます。

ですので、余談ですが、非上場株式・少数株式の株主としても、悪くない金額が設定されることが多いですので、その罰金をもらい続けることでもそれなりの満足を得られるかもしれません。

参考:会社法

(株式会社による買取りの通知)
第百四十一条  株式会社は、前条第一項各号に掲げる事項を決定したときは、譲渡等承認請求者に対し、これらの事項を通知しなければならない。
2  株式会社は、前項の規定による通知をしようとするときは、一株当たり純資産額(一株当たりの純資産額として法務省令で定める方法により算定される額をいう。以下同じ。)に前条第一項第二号の対象株式の数を乗じて得た額をその本店の所在地の供託所に供託し、かつ、当該供託を証する書面を譲渡等承認請求者に交付しなければならない。
3  対象株式が株券発行会社の株式である場合には、前項の書面の交付を受けた譲渡等承認請求者は、当該交付を受けた日から一週間以内に、前条第一項第二号の対象株式に係る株券を当該株券発行会社の本店の所在地の供託所に供託しなければならない。この場合においては、当該譲渡等承認請求者は、当該株券発行会社に対し、遅滞なく、当該供託をした旨を通知しなければならない。
4  前項の譲渡等承認請求者が同項の期間内に同項の規定による供託をしなかったときは、株券発行会社は、前条第一項第二号の対象株式の売買契約を解除することができる。
(指定買取人による買取りの通知)
第百四十二条  指定買取人は、第百四十条第四項の規定による指定を受けたときは、譲渡等承認請求者に対し、次に掲げる事項を通知しなければならない。
一  指定買取人として指定を受けた旨
二  指定買取人が買い取る対象株式の数
(種類株式発行会社にあっては、対象株式の種類及び種類ごとの数)
2  指定買取人は、前項の規定による通知をしようとするときは、一株当たり純資産額に同項第二号の対象株式の数を乗じて得た額を株式会社の本店の所在地の供託所に供託し、かつ、当該供託を証する書面を譲渡等承認請求者に交付しなければならない。
3  対象株式が株券発行会社の株式である場合には、前項の書面の交付を受けた譲渡等承認請求者は、当該交付を受けた日から一週間以内に、第一項第二号の対象株式に係る株券を当該株券発行会社の本店の所在地の供託所に供託しなければならない。この場合においては、当該譲渡等承認請求者は、指定買取人に対し、遅滞なく、当該供託をした旨を通知しなければならない。
4  前項の譲渡等承認請求者が同項の期間内に同項の規定による供託をしなかったときは、指定買取人は、第一項第二号の対象株式の売買契約を解除することができる。

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