非上場株式の株価評価の算定方法とは?

非上場株式は上場株式と比較してふたつの問題点を抱えています。ひとつは非上場であることから「市場を通して売却できない」という問題点で、もうひとつは「市場価格が存在しないことから価格評価が難しい」という問題点です。

非上場株式を手放したいときは、どのような方法で売却すべきなのでしょう。また、非上場株式の株価評価・算定方法にはどのような方法で行うのでしょうか。

この記事では、非上場株式の株価評価・算定方法と売却方法について、取り扱い経験豊富な弁護士が解説します。

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非上場株式とは?!

非上場株式とは株式市場に上場していない株式のことです。新聞やネットの株価を見ていると、多くの株式が市場に上場している印象を持つかもしれません。

実は、日本の会社の株式は市場に上場している株式の方が少数派です。知名度の高い大きな会社(上場企業など)を除き、中小企業や同族会社、オーナー企業の株式はほとんどが非上場株式になっています。

市場に上場している上昇株式はよく目に留まるため、非上場株式は珍しいという印象を抱きがちですが、非上場株式は日本の会社で多く発行されています。

このように非上場株式は非常に多く存在していますので、会社経営や事業承継、相続などのときに、非上場株式の問題に直面する可能性が高くなります。

非上場株式の問題点!!

記事の冒頭でも簡単にお話ししましたが、非上場株式には大きく分けて2つの問題があります。

・非上場株式は売却が難しい

・非上場株式は株価評価・算定が困難である

たとえば、手持ちの非上場株式を売却したいとします。

非上場株式は市場で取引されていません。上場株式なら売却したいときに市場で売却できますからスムーズです。株式の売却価格も市場の株価をチェックすればいいだけの話です。しかし、非上場株式は上場していないために市場で売却できず、市場の株価を参考にすることもできません。

参考にできる株価が存在しないため「専門家に算出してもらおう」となります。非上場株式の株価算定は税理士と公認会計士に依頼する方法があります。このときにどの専門家を選ぶかによって株価算出の方向性が変わってくるのです。

税理士は株価を相続税法の財産評価基本通達に基づいて計算することが一般的です。これを国税庁方式といいます。しかし、国税庁方式は、株式の時価ではなく税金の計算などに使われる便宜的な株価を算定する方法です。株式の時価とは異なるため、非上場株式の価値を正しく算定できない可能性があります。ただし、税理士の費用が安めであり依頼しやすいというのと、どの税理士が算定しても大きくは評価額が変わらないという特徴があります。

公認会計士の場合は相続税法の財産評価基本通達は使用しませんので、株式の時価を計算することとなります。ただ、株式の時価をどのように算出するか、株式をどのように評価するか、相続税法の財産評価基本通達という決まったルールがあるわけではないため、公認会計士ごとに株価算定の結果には幅が出る傾向にあります。また、公認会計士は税理士と比較して費用も高めの傾向にあります。

税理士や公認会計士に依頼する際は、非上場株式の評価の傾向や計算方法を理解し、目的も明確にして依頼する必要があります。

また、非上場株式の評価が無事に完了したとしても、買主が算定額に納得するとは限りません。

たとえば、株主が公認会計士Aに依頼して株価を算出したとします。対して買主は公認会計士Bに依頼して株価を評価しました。

公認会計士ごとに株価算定の結果には幅が出るため、公認会計士AとBの株価評価が違っている結果、買主と売主の交渉が難航しますし、買主と売主は自分に有利な株価評価を行ってくれる公認会計士を依頼し、自分に有利な株価での取引を主張することとなるのです。

非上場株式の株価評価方法とは?!

では、非上場株式の株価評価方法としては、どのようなものがあるのでしょうか。

まず、非上場株式の株価評価方法は大きく分けて2つの種類があります。

・国税庁方式(財産評価基本通達に基づく方法)

・時価

国税庁方式(財産評価基本通達に基づく方法)は税金の計算や便宜的な株価の計算の際に使われる株価の評価方法です。財産評価基本通達に基づく「便宜的な計算方法」ですので、株式の真実の価値を算定する際には向きません。あくまで税金計算や便宜的な計算で良い場合に使う株価評価方式になります。

時価は株価の本来の価値を算定したいときに使用される株価評価方法です。

非上場株式を売却する場合は、時価を使用することが本来の姿です。ただし、国税庁方式(財産評価基本通達に基づく方法)も、一応の株価を提示してくれますし、時価と大きくズレる場合もあればそれほどズレない場合もあるため、便宜的に、こちらを使用することでもよい場合はあるでしょう。

非上場株式の株価評価を算定する方法|国税庁方式

ではそれぞれ具体的にどのように株価評価がされるのでしょうか。

まずは国税庁方式の株価評価方法から見ていきましょう。

国税庁方式に基づく株価は次の3つの方法により算定されます。

・純資産価額方式

・類似業種比準方式

・配当還元方式

また、国税庁方式では、会社の規模や株主の状況により使用する株価算定方法が異なってきます。

国税庁方式では、原則的な株価算定方法が「純資産価額方式」と「類似業種比準方法」です。例外的な株価算定方法として「配当還元方式」が使われています。

国税庁方式では、大会社の株価算定の場合は「類似業種比準方法」を使います。小会社の場合は「純資産価額方式」を使います。中規模の会社の場合は大会社と小会社の評価方法を併用します。

ただし、株主の状況によっては例外的に配当還元方式を使って株価を評価します。同族株主以外の株主が保有する株式については、会社の規模に関わらず例外的な評価方法である配当還元方式を使います。

ある株主とその同族が保有している議決権の割合が30%(会社によっては50%)以上の場合の株主とその同族を「同族株主」といいます。同族株主は会社に対して強い影響力を持っていることから、株式評価価格が高額となる原則的な株価算定方法が適用されるのです。

他方、同族株主以外の株主(少数株主)が保有する株式については配当還元方式が適用されるのです。

類似業種比準方式

類似業種比準方式は、大会社の非上場株式の評価で使われる方法です。類似業種の会社の株価・評価を参考に非上場株式の評価額を算定する方法になります。

類似業種比準方式では、類似業種の会社の株価に「類似会社の1株あたりの純資産」「類似会社の1株あたりの利益金額」「類似会社の1株あたりの配当額」を乗じ、さらに斟酌率を乗じて算出するという流れです。類似業種の会社の株価を、純資産・利益金額・配当額の違いに着目して修正することにより、株価を算定するのです。

類似業種の会社の「類似会社の1株あたりの純資産」「類似会社の1株あたりの利益金額」「類似会社の1株あたりの配当額」は、いずれも財産評価基本通達で決まっています。

純資産価額方式

純資産価額方式は、規模の小さな会社の非上場株式を評価するときに使われる方式です。ただし、大企業や中規模の企業の株価を算定する際にも、その規模に応じて、一定程度、加重平均することにより考慮に入れることとなります。

純資産価額方式は、会社を清算すると仮定して株式の評価額を算出する方法です。現時点で会社を清算する場合は1株あたりにどのくらいの配分ができるかを計算するのです。

たとえば、小企業Aが現時点で清算・解散すると仮定して計算するとします。会社の不動産などの資産をすべて換金し、そこから負債を返済したとして、1株あたりどのくらいが配分されるか計算して、株価を評価するのです。

ですので、純資産価額方式においては、会社の資産をすべて時価評価し直す必要があります。例えば、不動産であれば戦後まもなく購入した不動産はかなりの含み益があるでしょうから高く評価替えをする必要がありますし、平成バブルの時期に購入した不動産にはかなりの含み損があるでしょうから低く評価替えをする必要があります。また、節税保険などで簿外に逃がしている資金がある場合はそれも加算して株価評価をする必要があります。他方、倒産してしまったゴルフ場のゴルフ会員権や電話加入権のようなものはゼロ評価して株価評価をする必要があります。

配当還元方式

配当還元方式は、非同族株主は、経営に参加できず配当金をもらうくらいしかできない株主であるということで、非同族株主の保有する株式の株価評価のために例外的に使われる株価算定方法です。配当還元方式は純資産価額方式や類似業種比準方式より株価算定結果が、かなり少額になる傾向があります。

配当還元方式では過去2年間の配当金額を10%で割戻して株価を求めます。ただ、株式の配当がない会社については、仮に一株当たりの配当金は2円50銭として計算することとなります。

以上のとおり、国税庁方式による株価算定方法は、財産評価基本通達に規定されており、かなり技巧的なところがあります。税額算定のためには税理士によってあまり算定結果が異なっては困りますので、しっかりルールを策定する必要があり、それが財産評価基本通達なのですが、その結果、会社の実態はある程度捨象した算定方法となっているのです。

非上場株式の株価評価を算定する方法|時価

では、非上場株式の株価の時価はどのように算定するのでしょうか。この場合も、「収益還元方式」「純資産価額方式」「配当還元方式」が使用されます。

収益還元方式

収益還元方式とは、会社の将来的な収益を基礎として株価評価を行う方法です。ディスカウントキャッシュフロー法(DCF法)も収益還元法の一つの方法です。会社の現在又は将来の収益を計算・予測しそれを現在価値に割り戻すことにより現在の株価評価を算定する方法です。現在又は将来の収益が当面続くことを前提として、又は、将来の収益を予測することにより、その収益の合計の現在価値が株式の価値と考えるのです。

会社は基本的に清算を予定しておらず、継続することを前提としていますので、純資産方式ではなく、この収益還元方式が、株価算定方式としては最も重要となります。多くのケースにおいて、株価算定方式としては、収益還元方式を使用して、株価が算定されることとなります。

ただ、収益還元方式による株価評価は、現在又は将来の収益が当面続くことを前提とし、又は、将来の収益を予測したりしていますので、このような前提や予測が客観性に欠けることがあるなど、株価算定をする公認会計士次第で株価が大きく変動する特徴を有しています。

純資産価額方式

純資産価額方式は、国税庁方式とおおむね同じであり、会社を清算すると仮定して株式の評価額を算出する方法です。現時点で会社を清算する場合は1株あたりにどのくらいの配分ができるかを計算するのです。

たとえば、小企業Aが現時点で精算・解散すると仮定して計算するとします。会社の不動産などの資産をすべて換金し、そこから負債を返済したとして、1株あたりどのくらいが配分されるか計算して、株価を評価するのです。

具体的には、決算書の貸借対照表の勘定科目の数字をひとつひとつ時価に引き直して純資産を再計算することとなります。国税庁方式と同様、不動産の価値や節税保険の価値、有価証券の価値などを修正して再計算することが多くなります。もちろん、その他の勘定科目も修正する必要があります。

ただ、すべての勘定科目を修正すると非常に手間がかかるなどもっと簡易な株価算定で問題が無いような場合や、歴史の浅い会社など時価評価しなくても決算書の貸借対照表に記載の金額が概ね時価と変わらないと言えるような場合は、わざわざ時価評価し直すことなく、簿価をそのまま使用する簿価純資産方式を採用することもあります。また、時価評価する必要がある場合であっても、不動産や有価証券など時価評価して再計算すべき勘定科目のみを時価評価し、その他の勘定科目については時価評価まで行わない部分的時価純資産方式も多く使用されます。

配当還元方式

将来的に得るべき配当金の現在価値を非上場株式の株式価値として評価する方法です。

「配当還元方式」は国税庁方式にもありますが、同じ名前の全く違った株価算定方法です。

株式の時価としての「配当還元方式」においては、配当金が少なければ株価評価も低くなるという単純な話にはならず、配当金が少なければそれを投資に回すことができ会社の事業が成長することから将来的にはより多く配当金が配当されることとなることから結果として株価評価が高くなるという可能性もあります。

株式の時価としての「配当還元方式」も、少数株主は、経営に参加できず配当金をもらうくらいしかできない株主ということで、少数株主の保有する株式の株価評価のために使われる株価算定方法です。

また、ここでも、配当還元方式は純資産価額方式や収益還元方式より株価算定結果が、かなり少額になる傾向があります。

ただ、この少数株主について、経営株主や同族株主など、将来的に大株主と連携するなどして、配当金をもらう以外にも経営に参加できる可能性もある場合などは、少数株主ではなく大株主と同様に扱うべきであったり、少数株主と大株主の中間的な存在として扱うべきであったり、必ずしも配当還元方式を使用すべきではない場合も多くあります。日本公認会計士協会の企業価値評価ガイドラインにおいては議決権比率20%より少ない場合を少数株主とすべきではないかと言っていますが、個別具体的に検討すべきように思います。

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非上場株式の評価方式

上場株式の場合は証券取引所での取引を通じて株価が決定されますが、非上場株式はそのようにして株価を定めることができません。

そこで、非上場株式については、国税庁の財産評価基本通達にもとづいて株価を評価することになります。

ここでは、非上場株式の評価方式について説明していきます。

原則的評価方式と特例的評価方式

財産評価基本通達には、原則的な評価方式と特例的な評価方式が定められています。原則的な評価方式には、類似業種比準方式、純資産価額方式、これらの価額の併用の3種類があります。

原則的な評価方式は、会社の規模により3種類のいずれが適用されるか決定されます。特例的な評価方式としては、配当還元方式や純資産価額方式等が定められています。

特例的な評価方式が用いられるケースの一つは、同族株主以外の株主が非上場株式を取得した場合のように、取得者の性質による場合です。

もう一つのケースは、土地保有特定会社のように、非上場株式を発行している会社の性質が通常の会社と比べて特殊な場合です。

評価方式の決定基準

非上場株式の評価方式の決定基準について、具体的に見ていきましょう。

会社の規模

原則として、非上場株式の評価方式は会社の規模に応じて決定されます。

会社の規模は、大会社、中会社、小会社に分けられています。大会社では、類似業種比準方式が適用されます。中会社は、規模に応じて3種類に分類され、それぞれに応じて類似業種比準方式と純資産価額方式を異なった比率で足し合わせることで併用します。小会社では、純資産価額方式が適用されます。

なお、大会社と中会社の場合は、純資産価額方式を選択することも可能です。小会社の場合では、類似業種比準方式と純資産価額方式を50%ずつの割合で併用した価額を選択することができます。

同族株主以外の株主等が取得した場合

特例的な評価方式が用いられる場合の一つとして、同族株主以外の株主等が取得した場合があります。この場合には、特例的な評価方式として配当還元方式が適用されます。

同族株主以外の株主等が取得した場合とは、以下の4つの場合です。

・同族株主(注1)がいる会社で、同族株主以外の株主が株式を取得した場合

・中心的な同族株主がいる会社で、中心的な同族株主以外の同族株主が株式を取得した場合で、株式取得後のその者の議決権割合が5%未満である場合(ただし、取得者が役員または役員予定者の場合を除きます)

・同族株主がいない会社で、課税時期において、株式を取得した株主とその同族関係者(注3)が有する議決権割合が、合計して15%未満である場合

・中心的な株主(注4)はいるが同族株主はいない会社で、課税時期において、株式を取得した株主とその同族関係者が有する議決権割合が15%以上の場合で、その者の株式取得後の議決権割合が5%未満である場合(ただし、取得者が役員または役員予定者の場合を除きます)

注1:同族株主とは、株主の1人とその同族関係者が会社の議決権割合の30%以上を保有している場合の、株主および同族関係者を指します。
ただし、株主の1人とその同族関係者が会社の議決権割合の50%超を保有している場合では、50%超の議決権割合を有する株主の1人とその同族関係者のみを指します。

注2:中心的な同族株主とは、課税時期において、同族株主の1人とその配偶者・直系血族・兄弟姉妹・1親等の姻族(これらの者の同族関係者となる会社のうちで、これらの者が25%以上の議決権割合を有する会社を含みます。)の有する議決権割合が25%以上となる場合の株主をいいます。

注3:同族関係者とは、親族、内縁の者、使用人等の他、特殊な関係にある法人(子会社等)を含みます。

注4:中心的な株主とは、課税時期において、株主の1人とその同族関係者で15%以上の議決権割合を保有している株主グループがある場合に、いずれかの株主グループに単独で10%以上の議決権割合を有している株主がいる場合のその株主を指します。

特定の評価会社に該当する場合

特例的な評価方式が用いられる場合として、特定の評価会社に該当する場合があります。

特定の評価会社には以下のような会社があります。

・清算中の会社
・開業前または休業中の会社
・開業後3年未満の会社または比準要素(注)数0の会社
・土地保有特定会社
・株式等保有特定会社
・比準要素(注)数1の会社

注:比準要素とは、1株当たりの配当金額、1株当たりの年利益金額、1株当たりの純資産価額の3つです。
比準要素数0の会社では、いずれの額も0になっています。
比準要素数1の会社では、いずれか2つの額が0となります。

特定の評価会社の評価方式は、以下の表のようになります。

特定の評価会社の種類 評価方式(同族株主が取得) 評価方式(同族株主以外が取得)
清算中の会社 清算分配見込額の複利現価 清算分配見込額の複利現価
開業前または休業中の会社 純資産価額方式 純資産価額方式
開業後3年未満の会社 純資産価額方式 配当還元方式
比準要素数0の会社 純資産価額方式 配当還元方式
土地保有特定会社 純資産価額方式 配当還元方式
株式等保有特定会社 純資産価額方式
(S1+S2方式を選択可能)
配当還元方式
比準要素数1の会社 純資産価額方式
(類似業種比準価額×0.25+純資産価額×0.75を選択可能)
配当還元方式

非上場株式の評価方式のまとめ

以上のように、非上場株式の評価方式には、原則的な評価方式と特例的な評価方式があります。

具体的な評価方式を定めるにあたっては、まず例外的な場合に該当するか判断し、該当しない場合は原則に戻って会社の規模によって評価方式を定めることになります。

会社の規模による区分

会社の規模による区分は、以下の表のようになります。

特定の評価会社の種類 評価方式(同族株主が取得) 評価方式(同族株主以外が取得)
清算中の会社 清算分配見込額の複利現価 清算分配見込額の複利現価
開業前または休業中の会社 純資産価額方式 純資産価額方式
開業後3年未満の会社 純資産価額方式 配当還元方式
比準要素数0の会社 純資産価額方式 配当還元方式
土地保有特定会社 純資産価額方式 配当還元方式
株式等保有特定会社 純資産価額方式
(S1+S2方式を選択可能)
配当還元方式
比準要素数1の会社 純資産価額方式
(類似業種比準価額×0.25+純資産価額×0.75を選択可能)
配当還元方式

「総資産価額」は、課税時期の直前に終了した事業年度の末日時点で、評価会社の各資産を帳簿価額で合計して算定します。

「従業員数」は、以下の二つの数を加算して求めます。
①継続勤務従業員(直前期末以前1年間継続勤務、かつ、週所定労働時間30時間以上)の数
②直前期末以前1年間に勤務していた従業員(継続勤務従業員以外)の、1年間の合計労働時間数を年間平均労働時間数(1,800時間)で除して求めた数

「直前期末以前1年間の取引金額」は、その期間内での、評価会社の目的とする事業にかかる収入の金額です。
評価会社が金融業・証券業の場合は、収入利息および収入手数料となります。

会社規模を判定する順序

会社規模を判定する順序は以下のようになります。

従業員数が70人以上の場合は、他の基準に関わらず、大会社に該当します。

従業員数が70人未満の場合は、まず、従業員数基準と純資産価額基準を比較し、規模区分が小さくなる方の基準を採用します。

次に、その基準と取引価額基準を比較し、大きくなる方の規模区分で最終的に判定します。

会社規模による非上場株式の評価方式

会社の規模により、非上場株式の評価方式が異なります。

大会社

大会社の場合は、原則として、類似業種比準価額によって評価します。なお、1株当たり純資産価額を選択することもできます。

中会社

中会社の場合は、原則として、以下の表に応じて、類似業種比準価額と1株当たり純資産価額を併用した価額によって評価します。

以下の2つの表の区分を比較し、会社規模が大きくなる方を採用します。

特定の評価会社の種類 評価方式(同族株主が取得) 評価方式(同族株主以外が取得)
清算中の会社 清算分配見込額の複利現価 清算分配見込額の複利現価
開業前または休業中の会社 純資産価額方式 純資産価額方式
開業後3年未満の会社 純資産価額方式 配当還元方式
比準要素数0の会社 純資産価額方式 配当還元方式
土地保有特定会社 純資産価額方式 配当還元方式
株式等保有特定会社 純資産価額方式
(S1+S2方式を選択可能)
配当還元方式
比準要素数1の会社 純資産価額方式
(類似業種比準価額×0.25+純資産価額×0.75を選択可能)
配当還元方式

導出された会社規模に応じて、原則として、以下の評価方式によって株価を評価します。

規模 評価方式
大  類似業種比準価額×0.90 + 純資産価額×0.10
類似業種比準価額×0.75 + 純資産価額×0.25
類似業種比準価額×0.60 + 純資産価額×0.40

なお、1株当たり純資産価額のみを用いることを選択することも可能です

小会社

小会社の場合は、原則として、1株当たり純資産価額によって評価します。

なお、類似業種比準価額×0.5 + 純資産価額×0.5で計算した価額を選択することも可能です。

非上場株式の売却方法は?!

では、このような非上場株式はどのように売却すればよいのでしょうか。

非上場株式を売却する相手としては主として会社(役員等を含む)と第三者が考えられます。非上場株式は、たいてい譲渡制限付株式でしょうから、譲渡制限付株式であることを前提に説明します。

非上場株式の買主を探す

非上場株式は市場で売却することができません。よって、非上場株式を売却するときは買主を自分で見つけなければいけません。

非上場株式の譲渡の承認を会社に請求する

非上場株式を買ってくれる買主を見つけたら、買主と売却条件・価格などを決めます。買主と売却条件・価格などで合意したら、次は非上場株式を発行している会社に株式譲渡の承認を請求する必要があります。

会社からの株式譲渡の承認または拒否の通知

会社がその買主に対する株式譲渡を承認すれば、その買主に対して株式譲渡をすることができます。ただ、会社に株式譲渡の承認を請求しても、会社が株式譲渡を承認しないことも珍しくありません。

株式譲渡の承認の拒否の場合は会社が株式を自ら買い取るか指定買取人が買い取る

会社が買主への株式譲渡を承認しない場合は、株主は、会社に自ら株式を買い取るか買取人を指定してもらいその指定買取人が株式を買い取ることを求めることができ、その場合、会社又は指定買取人がその非上場株式を買い取る義務があります。

会社又は指定買取人と非上場株式買取価格の交渉をする

会社から、会社が自ら株式を買い取る旨の通知又は指定買取人が株式を買い取る旨の通知があったら、株主は会社又は指定買取人との間で、株式譲渡の価格交渉を行い、株式譲渡の価格がまとまれば、会社又は指定買取人に対して非上場株式を買い取ってもらうという流れになります。

非上場株式買取価格が交渉で決定しない場合は株価決定裁判を申し立てる

会社又は指定買取人との交渉で、株式買取価格が決まらなければ、裁判所に価格決定を申し立てることができます。

株式買取価格を支払う

株価決定裁判において、主張立証を尽くし、和解が成立したり、裁判所の決定が出た場合は、それに従って、株式買取価格を払ってもらいます。

非上場株式の株価評価や売却の注意点

非上場株式の株価評価と売却については、上場株式とは異なり、注意したい独特のポイントが多く存在します。

非上場株式の株式買取請求権は法律上存在しない

株式買取請求権という用語が一般的に知れ渡っているため、非上場株式の株主には株式買取請求権という権利が存在しているものと勘違いをしている株主の皆様がいらっしゃいますが、株式買取請求権という権利は基本的に存在していません。

会社が合併や会社分割・株式交換・事業譲渡・スクイーズアウトなどをする場合や、会社が株式について株式譲渡制限を導入する場合など、会社の都合で株主の基本的権利に変容を加える場合の限定的な場合において、株式買取請求権が発生することがありますが、平時においては株式買取請求権は存在しません。

唯一、非上場株式の株主が株式を譲渡しようとして会社に対して株式譲渡承認請求をして会社がこれを拒否した場合には、会社又は指定買取人に株式買取義務が発生することがあります。このことを株式買取請求権と呼んでいる人もいるようです。

ただ、そのような限定的な状況下でない場合、株式買取請求権は存在しませんので、非上場株式の株主としては、当然、株式を会社に買ってもらえると考えることはできないのです。

非上場株式の買主の探索は容易ではない

このような非上場株式は、たいてい少数株式と思われますが、少数株式の買主の探索は非常に容易ではありません。買主が譲渡を受けてもやはり少数株式ですので、経営に参加することはできず、配当を受領するだけになってしまう可能性も高く、その配当すら払ってもらえないかもしれません。他方、会社としては、少数株主の存在は会社経営に大きな障害であり、できることなら少数株式を買い取ってしまいたいとの意向を有する会社がほとんどです。ですので、少数株式としては、会社又は大株主に株式譲渡することが最もウィンウィンだということとなりますので、会社又は大株主に対する株式譲渡を検討する必要があります。ただ、会社又は大株主が株式を買い取ってくれないような場合においては、止むを得ませんので、第三者の買主に株式を買い取ってもらうしかないかもしれません。最近では、そのような株式に投資をしたいという投資家も増えてきているように思いますので、そのような投資家を探してみてもよいかもしれません。

非上場株式の株価評価額で買い取ってもらえるわけではない

非上場株式の株主が株価評価を行った株価について、会社や指定買取人その他の買主が納得するとは限りません。買主は非上場株式を「安く買いたい」という思惑があるため、株価算定結果や株価評価方法に異議を唱えることも珍しくないのです。またそもそも買主によっては適正な株価では株式を買い取らない(額面などの著しく安い価格でしか株式を買い取らない)という方針であることもあります。また、買主は買主で、公認会計士に依頼して非上場株式の株価評価を出してきて、株価自体を争ってくることもあります。

このようなケースでは売主と買主の交渉で株式の譲渡価格を決めることになります。買主が交渉上手である場合、売主である株主は交渉で上手く丸め込まれたり、足元を見られたりして、非上場株式を安く買い叩かれてしまうケースは珍しくありません。

仮に買主が株価評価の額に理解を示してくれそうなケースでも、株価評価の額にしっかりとした論拠がなければ説得は難しいと言えます。

非上場株式を会社が買い取った場合はみなし配当課税が適用され最高税率55%

また、非上場株式の株主が会社と株式買取価格について無事に合意したとしても、会社が株式を買い取る場合は、株式譲渡の通常の場合のような株式譲渡益課税(税率20%程度)が適用されるのではなく、みなし配当課税が適用され最高税率55%の総合課税の対象となってしまいます。給与所得と同じ所得税体系であり、課税所得4,000万円超の部分について45%の所得税と10%の住民税が課税されてしまいます。ですので株式売却益が多額に上る場合はかなりの部分を税金として納める必要が生じてしまうため、そうであれば会社ではなく役員その他の第三者に株式譲渡する方が非常に好ましいこととなるため、非上場株式については、譲渡の相手方についても慎重に検討しつつ対応をする必要があります。

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最後に

非上場株式の売却の流れはシンプルです。しかし、流れ自体はシンプルでわかりやすいのですが、価格が市場に出ていないために価格算定の段階で揉めることが少なくありません。

非上場株式には大きく分けて2種類の評価方法があります。2種類の評価方法はさらに細かな評価方法に分かれるため、どの方法で非上場株式を評価するか選択するだけでも一苦労です。さらに、非上場株式は市場で売買ができないため、売却を進める際の買主探しなど、上場株式の売却にはない難しさがあります。

非上場株式の評価方法にはいろいろあり、会社や業種によって適切な評価方法が変わってきます。交渉も個人で行うには難しいのが現実です。価格算定には専門知識も要しますので、取り扱い経験豊富な弁護士に算定を任せることをおすすめします。

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