非上場株式・少数株式の株式価格評価における配当還元方式の否定!

非上場株式・少数株式の株式価格評価における配当還元方式の否定

配当還元方式とは、将来期待される1株当たりの配当金額を一定の資本還元率で還元して元本にあたる非上場株式・少数株式の価格を算出する方式です。

配当還元方式で非上場株式・少数株式の株式価値を算定すると、一般的に、異常に安い金額が算出されます。

実務的にも違和感のある、そのような安い金額が、本当に正しいのでしょうか。

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配当還元方式による株式価格評価は過小評価である!

この点、配当還元法による評価は、「現実には、社内留保等が課題に行われて配当金額が抑えられがちであるから、この方式に基づく算定は過少になりがちであるとの指摘もある」(東京地方裁判所商事研究会編『類型別会社非訟』89頁(判例タイムズ社・2009年)とされています。

また、江頭憲治郎教授『株式会社法第7版』16頁(有斐閣・2017年)においても、「・・・予測される配当金額をリターンの額として取引相場のない株式等の評価に用いると過小評価となり、株主(社員)に不利になりがちである。なぜなら、現実には社内留保が課題に行われがちだからである。」ともされています。

やはり、配当還元方式に基づく株価については、異常に安く産出されるという実務感覚は正解であり、過小評価されているものと思われます。

配当還元法による株式価格評価の選択が許される場合もある!!

ただ、配当還元方式を選択することが正解であるとされる場合もあります。

配当還元法の選択が許されるのは、一般株主の株式の株式価値評価の局面である。すなわち、一般株主にとっては、将来の剰余金配当に対する期待が投資対象であることから、配当還元法は、一般株主の株式の評価方法として選択されることがある(上柳克郎ほか編『新版注釈会社法(3)株式(1)』120頁(有斐閣・1986年)及び(東京地方裁判所商事研究会編『類型別会社非訟』91頁(判例タイムズ社・2009年)))とされています。

また、東京地裁商事研究会編『商事非訟・保全事件の実務』83頁(判例時報社・1991年)も、配当還元法を採用することができる一般株主の基準について、「会社の経営に無関心なあるいは無関係な株主であるかどうかは何を基準にして決めるべきかと言えば、それは結局のところ、その所有する株式の数に求めざるを得ないから、配当還元方式は少量株〔発行済み株式数の何パーセント未満を少量株式とみるかについては一定の基準があるわけではない。研究会に参加された公認会計士は、10パーセント未満を少量株主と考えているとのことであった。〕の売買の場合に有用であるということになろう。」と述べています。

すなわち、一定比率を下回る零細な株主については、株価評価の際、配当還元方式を採用することは許されるようです。

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