配当還元方式(株式相続税評価額)!

配当還元法について|非上場株式・少数株式の株式相続税評価額

非上場株式・少数株式の株式価値評価方法の一つに「配当還元法」というものがあります。

この「配当還元法」ですが、①会社法上の株式の時価についても存在し、②税法上の相続税評価額についても存在します。

この①会社法上の株式の時価と②税法上の相続税評価額は、同じなのでしょうか。

配当還元法は、対象会社から株主に対して配当が実施される額を継続的に受領することを想定して、非上場株式・少数株式の株式価値を評価する方法ですという点は同じです。

しかしその内実は、全く違うのです。

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会社法上の株式の時価としての配当還元法

会社法上の非上場株式・少数株式の時価としての配当還元法では、

対象会社が非上場株式・少数株式について全く配当を行っていなかった場合、配当還元法では非上場株式・少数株式の株式価値はゼロとなってしまう分けではありません。

会社法上の非上場株式・少数株式の時価としての配当還元法では、類似業種の配当性向などに鑑み、対象会社であるべき配当を算定し、例えば、最終利益の3分の1を配当するのが対象会社の属する業界の傾向であれば、それだけ配当することを前提として、受領できる配当額の合計額の現在価値から、非上場株式・少数株式の株式価値を算定することとなります。

その対象会社がたまたま配当していなかったからと言って非上場株式・少数株式の株式価値評価がゼロとなるものではありません!!

配当性向が30%くらいになることはおかしくありません。

むしろ、「約30%が一般的な上場企業の水準の範囲内と言える」とする裁判例も存在します。

また、将来の配当金額を現在価値に割り引くための割引率も会社によって様々です。

10%もの高率になることは普通はありません。

下記で紹介している裁判例では、従業員38人の会社について割引率は4.634%とされています。

株式相続税評価額としての配当還元法

株式相続税評価額としての配当還元法では、

その対象会社がたまたま配当していなかったのなら、株式価値評価はゼロです。

配当金がないのですからゼロです。

また、将来の配当金額を現在価値に割り引くための割引率も税法によって決まっています。

10%もの高率です。

10%で割り引くと10年後の1億円はなんと348万6784円になってしまいます。

株式相続税評価額としての配当還元法は、相続税が過重になり過ぎないようにとの配慮がなされているのです。

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参考:税法

1 原則的評価方式原則的評価方式は、評価する株式を発行した会社を総資産価額、従業員数、及び取引金額により大会社、中会社又は小会社のいずれかに区分して、原則として次のような方法で評価をすることになっています。
(1) 大会社大会社は、原則として、類似業種比準方式により評価します。類似業種比準方式は、類似業種の株価を基に、評価する会社の一株当たりの「配当金額」、「利益金額」及び「純資産価額(簿価)」の三つで比準して評価する方法です。
なお、類似業種の業種目及び業種目別株価などは、国税庁ホームページで閲覧できます。
(2) 小会社小会社は、原則として、純資産価額方式によって評価します。純資産価額方式は、会社の総資産や負債を原則として相続税の評価に洗い替えて、その評価した総資産の価額から負債や評価差額に対する法人税額等相当額を差し引いた残りの金額により評価する方法です。
(3) 中会社中会社は、大会社と小会社の評価方法を併用して評価します。

2 特例的な評価方式取引相場のない株式は、原則として、以上のような方式により評価しますが、同族株主以外の株主等が取得した株式については、その株式の発行会社の規模にかかわらず原則的評価方式に代えて特例的な評価方式の配当還元方式で評価します。配当還元方式は、その株式を所有することによって受け取る一年間の配当金額を、一定の利率(10%)で還元して元本である株式の価額を評価する方法です。

3 特定の評価会社の株式の評価次のような特定の評価会社の株式は、原則として、(1)~(5)については純資産価額方式により、(6)については清算分配見込額により評価することになっています。
なお、(1)~(4)の会社の株式を取得した同族株主以外の株主等については、特例的な評価方式である配当還元方式により評価することもできます。
(1) 類似業種比準方式で評価する場合の3つの比準要素である「配当金額」、「利益金額」及び「純資産価額(簿価)」のうち直前期末の比準要素のいずれか2つがゼロであり、かつ、直前々期末の比準要素のいずれか2つ以上がゼロである会社(比準要素数1の会社)の株式
(2) 株式等の保有割合(総資産価額中に占める株式や出資の価額の合計額の割合)が一定の割合以上の会社(株式保有特定会社)の株式
(3) 土地等の保有割合(総資産価額中に占める土地などの価額の合計額の割合)が一定の割合以上の会社(土地保有特定会社)の株式
(4) 課税時期(相続の場合は被相続人の死亡の日、贈与の場合は贈与により財産を取得した日)において開業後の経過年数が3年未満の会社や、類似業種比準方式で評価する場合の3つの比準要素である「配当金額」、「利益金額」及び「純資産価額(簿価)」の直前期末の比準要素がいずれもゼロである会社(開業後3年未満の会社等)の株式
(5) 開業前又は休業中の会社の株式
(6) 清算中の会社の株式

参考:会社法

(売買価格の決定)
第百四十四条  第百四十一条第一項の規定による通知があった場合には、第百四十条第一項第二号の対象株式の株式売買価格は、株式会社と譲渡等承認請求者との協議によって定める。

1  株式会社又は譲渡等承認請求者は、第百四十一条第一項の規定による通知があった日から二十日以内に、裁判所に対し、株価決定申立をすることができる。
2  裁判所は、前項の決定をするには、譲渡等承認請求の時における株式会社の資産状態その他一切の事情を考慮しなければならない。
3  第一項の規定にかかわらず、第二項の期間内に同項の申立てがあったときは、当該申立てにより裁判所が定めた額をもって第百四十条第一項第二号の対象株式の株式売買価格とする。
4  第一項の規定にかかわらず、第二項の期間内に同項の申立てがないとき(当該期間内に第一項の協議が調った場合を除く。)は、一株当たり純資産額に第百四十条第一項第二号の対象株式の数を乗じて得た額をもって当該対象株式の株式売買価格とする。
5  第百四十一条第二項の規定による供託をした場合において、第百四十条第一項第二号の対象株式の株式売買価格が確定したときは、株式会社は、供託した金銭に相当する額を限度として、売買代金の全部又は一部を支払ったものとみなす。
6  前各項の規定は、第百四十二条第一項の規定による通知があった場合について準用する。この場合において、第一項中「第百四十条第一項第二号」とあるのは「第百四十二条第一項第二号」と、「株式会社」とあるのは「指定買取人」と、第二項中「株式会社」とあるのは「指定買取人」と、第四項及び第五項中「第百四十条第一項第二号」とあるのは「第百四十二条第一項第二号」と、前項中「第百四十一条第二項」とあるのは「第百四十二条第二項」と、「第百四十条第一項第二号」とあるのは「同条第一項第二号」と、「株式会社」とあるのは「指定買取人」と読み替えるものとする。