受取配当等(みなし配当を含む)の益金不算入の要件!

受取配当等の益金不算入制度とは

法人が他の法人から配当等を受け取った場合、どのように処理するのかが問題になります。配当等は利益に該当するものなので、法人に利益が発生したものとして処理するのが自然です。法人が利益を得たときの処理方法は、会計上は収益とし、税務上は益金とするのが原則です。そして、益金に対して法人税が課せられることになります。益金に算入する金額を決める際は、法人税法22条2項の規定に従わなければなりません。以下、法人税法の規定は条文番号のみ示します。

受取配当等を常に益金として取り扱うことにすると、法人税を課税する際に大きな問題が生じることがあります。適切な課税を行うために認められているのが、受取配当等の益金不算入制度(23条)です。法人が受け取った配当等を益金に算入しないことで、過剰な法人税の納付をせずに済みます。ただし、受取配当等であれば必ず益金不算入になるというわけではありません。益金に算入すべきものと、不算入にできるものとに分かれていることに注意が必要です。

⇒非上場株式・譲渡制限株式・少数株式を売却できずにお困りの方はこちら!

1.制度の見直し

平成27年度に行われた税制改正により、受取配当等の益金不算入制度の内容が見直されることになりました。対象となる受取配当等は内国法人からのもので、法人税に関わる税制改革の一環として行われた見直しです。法人税の構造を「課税ベースを拡大しつつ税率を引き下げる」という考え方に基づいて改革する中で、二重課税を防ぐことを目的としています。

2.会計と税務の処理の違い

企業が受け取った配当金に関する取扱いは、会計上のものと税務上のものとで大きく異なっていることに注意しなければなりません。会計上の処理を行う際は、受取配当金という勘定科目を用いて処理します。つまり、収益として計上することになるのです。税務上の処理も同様に行うのであれば益金として処理するため、法人税の課税対象になります。

しかし実際は、会計上のものとは異なる処理がなされています。税務上は受取配当金を益金不算入という形で処理することが可能です。このように処理することが認められる結果、益金不算入になった分だけ企業の所得が少ないことになり、納めるべき法人税の金額も小さくなるのです。

収益も益金も、法人の利益である点については共通しています。しかし、会計と税務とでは基本的な考え方が異なっているため、それぞれに含める範囲に違いが生じます。会計上の処理をするときは、当該法人がどのくらい利益を得ているのかが重視されます。これに対し、税務上の処理をするときに重視されるのは納税者間の公平を図ることです。

3.益金不算入の扱いが認められる理由

会計上の処理と税務上の処理が異なることで法人税の金額が少なくなるため、なぜ益金不算入という取扱いが認められるのかという疑問が生じます。その根拠は、二重課税の防止という点にあります。

受取配当について特別な配慮をしないまま課税を行うと、配当を支払う法人と受け取る法人の双方に対して法人税が課せられることになり、二重課税に該当する可能性があるのです。企業が配当金を支払う場合、積み立てている利益剰余金の中から支払うのが通常だと考えられますが、利益剰余金というのは法人税を納めた後に残っている利益です。したがって、利益剰余金から支払われる配当金に法人税を課税すると、同一の利益を対象とした二重の課税が行われることになってしまいます。

4.益金不算入の制限

したがって、そもそも二重課税の状態が発生しないと考えられる場合に関しては、益金不算入制度の対象になりません。たとえば投資法人・特定目的会社のような一定の法人です。これらの法人に関する税務上の扱いでは、配当を支払う段階で損金に算入する処理が行われています。したがって、二重の法人税が発生することがありません。

ただし、企業がどのような目的で株式を保有しているのかについても考慮する必要があります。あらゆる企業において、受取配当等の全額を益金不算入とする取り扱いが認められるわけではありません。株式の保有目的・保有割合などに応じて、どの程度まで益金不算入にできるのかが変わってきます。

⇒非上場株式・譲渡制限株式・少数株式を売却できずにお困りの方はこちら!

益金不算入となる金額の範囲

受取配当等の益金不算入が認められる法人の場合であっても、どこまで不算入となるのかは個別に考えていかなければなりません。複数の区分が設けられていて、どれに該当するのかを判断する必要があるのです。この判断を誤ってしまうと、納めるべき税金の金額を正しく計算することができなくなってしまいます。

1.益金不算入の対象

配当であれば益金不算入になるというわけではありません。益金不算入の対象となるのは、株主としての地位に基づいて受け取る配当等です。また、配当を支払う法人の側で損金として取り扱われているものも対象外とされます。益金不算入制度の目的は二重課税防止にあるため、そもそも二重課税の問題と関係がないと考えられるものも対象外です。これらについては、全額を益金として計上します。

①益金不算入となるもの

(1)剰余金の配当・利益の配当・剰余金の分配(23条1項1号)

(2)投資信託及び投資法人に関する法律137条に基づく金銭の分配額(23条1項2号)

(3)資産の流動化に関する法律115条1項に基づく金銭の分配額(23条1項3号)

(4)特定株式投資信託の収益分配額(租税特別措置法67条の6)

(5)みなし配当(24条)

原則として、受取配当が益金不算入の対象となるのは23条1項1号に規定される剰余金の配当・利益の配当・剰余金の分配の場合です。しかし、厳密に言えばこれらに該当していないものの、実質的に見れば変わらないと考えられるものがあります。そのため法人税法上は配当とみなし、益金不算入の対象に含める扱いにしたのがみなし配当です。

みなし配当の金額が大きい場合、税務上の処理を誤ったときのリスクも大きなものになります。判断するのが難しいときは、税務の専門家に相談することが望ましいです。

②益金不算入とならないもの

(1)保険会社の契約者配当(60条)

(2)協同組合等の事業分量配当等(60条の2)

(3)特定目的会社・投資法人の配当(租税特別措置法67条の14第6項、同15第6項)

(4)旧法23条1項3号に基づく収益の分配額

2.受取配当等の区分

益金不算入となる受取配当等であっても、全額が益金に算入しなくてよいわけではないため注意が必要です。保有している株式の区分によって、不算入にできる金額が決まっています。株式等の保有割合によって4つの区分があり、保有している株式がどの区分に該当するのかを正しく判断しなければなりません。納付する法人税の金額に影響するものなので、慎重な判断が求められます。

複数種類の株式を保有している場合は、それぞれの株式について計算を行い、合計額を受取配当等の益金不算入額として扱います。

①完全子法人株式等

保有割合が100%の場合の区分です。この場合は、受け取った配当等の全額を益金不算入額とすることが認められます。

②関連法人株式等

保有割合が33.3%超100%未満の場合の区分です。この場合は、受け取った配当等の全額から負債利子を差し引いた金額が益金不算入額となります。平成27年度の税制改正によって、関連法人株式等の配当のみが負債利子を控除する計算の対象となりました。

受取配当等の全額について益金不算入を認め、負債利子を損金として扱うことにすると、適切な結果が得られなくなります。そのため負債利子を控除することが必要です。負債利子の額については、総資産按分法・簡便法のいずれかを用いて計算します。

③その他の株式等

保有割合が5%超33.3%以下の場合の区分です。この場合は、受け取った配当等の50%を益金不算入額とすることができます。

④非支配目的株式等

保有割合が5%以下の場合の区分です。この場合は、配当等の20%を益金不算入額とすることが可能です。ただし、短期保有株式等については対象外となります(23条2項)。

⇒非上場株式・譲渡制限株式・少数株式を売却できずにお困りの方はこちら!

3.注意点

上記区分のうちで誤りやすいのは、③その他の株式等、④非支配目的株式等です。本来であれば非支配目的株式等に分類され、20%までしか益金不算入にならないはずなのに、その他の株式等だと考えて50%を益金不算入としてしまうことがあります。この場合、法人税額が少なく計算されることになってしまいます。

正しく判断するためには、株式の保有割合を確認した後、①完全子法人株式等・②関連法人株式等・④非支配目的株式等に該当するかを確認することが大切です。これら3つに該当しなかった場合に③その他の株式等を選ぶようにすると、誤りを防ぎやすくなります。

4.株式の保有要件

株式の保有割合が常に一定しているわけではないため、いつの時点における保有割合が基準となるのかを知っておくことが大切です。

①完全子法人株式等

受取配当等の額の計算期間(1年超の場合は基準日までの1年間)を通じて保有している必要があります。

②関連法人株式等

受取配当等の支払い基準日まで、6ヶ月以上保有している必要があります。

③その他の株式等、④非支配目的株式等

受取配当等の額の支払いにかかる基準日に保有していることが要件です。継続的に保有している必要はありません。

制度の適用を受ける方法

受取配当等の益金不算入制度の対象となる株式を保有していても、自動的に制度の適用を受けられるわけではありません。23条8項に基づき、「確定申告書、修正申告書又は更正請求書に益金の額に算入されない配当等の額及びその計算に関する明細を記載した書類」を提出する必要があります。この書類に記載されている金額が、益金不算入とされる金額の限度となります。

ここから先の重要な実務上の留意点については来所相談で!

なお、この論点については、実際の運用時における留意点の方が重要であり、ここから先の重要な実務上の留意点については、来所相談又は実際受任時にのみお話しさせて頂きます!

まとめ

受取配当等の益金不算入制度を正しく適用すれば、納める法人税の金額を減らすことができます。ただし、対象となる株式の区分の判断を誤ってしまうと、法人税額の計算を誤ることになるため注意が必要です。また、保有要件は株式ごとに異なっているので、慎重に提出書類を作成しなければなりません。

⇒非上場株式・譲渡制限株式・少数株式を売却できずにお困りの方はこちら!