株価決定申立(株価決定裁判)と譲渡代金と株券の供託手続・供託金還付手続の詳細!
株価決定申立(株価決定裁判)と株価相当額の供託手続
会社法第141条により、株式会社が、株式譲渡承認請求を拒否し、対象株式を買い取る旨を決定し、譲渡承認請求者(株主又は第三者)に対して、株式買取通知をする場合、株価相当額を法務局に供託し、株式買取通知書に供託書の写しを同封する必要があります。
その際に法務局に供託すべき株価相当額とは、簿価純資産法に基づく株価相当額(一株当たり純資産額(一株当たりの純資産額として法務省令で定める方法により算定される額をいう)に対象株式の数を乗じて得た額)となります。
また、供託すべき法務局は、株式会社の本店の所在地の供託所となります。
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株価決定申立(株価決定裁判)のための株価相当額の供託の期限
会社法145条において、株式会社が、株式譲渡承認請求の承認又は拒否の通知をした40日以内に、株式会社が譲渡承認請求者(株主又は第三者)に株式買取通知(供託書の写し同封)を送付しなかった場合、すなわち、株式会社が株価相当額の供託を行わなかった場合でもありますが、この場合、株式譲渡承認請求を承認したものとみなされてしまいますので(みなし承認)、株式会社は、株式譲渡承認請求の承認又は拒否の通知をした40日以内に、この株価相当額の供託を行わなければいけません。
株価決定申立(株価決定裁判)のための株価相当額の供託と遅延利息の不発生
なお、株主から株式譲渡承認請求が行われ、株式会社が譲渡承認請求を拒否し、譲渡承認請求者(株主又は第三者)に株式買取通知(供託書の写し同封)を送付した場合は、その時点で、株式の売買契約が成立し、株式の所有権は株主から株式会社へと移転します。
しかし、譲渡承認請求者(株主又は第三者)の株式の所有権は移転してしまっているのに、譲渡承認請求者(株主又は第三者)に対して株式売買代金を支払っていない状態となります。
すなわち、株式会社による株式売買代金の支払い遅延となるのですが、ここは、会社法144条6項に「第141条第2項の規定による供託をした場合において、第140条第1項第2号の対象株式の株式売買価格が確定したときは、株式会社は、供託した金銭に相当する額を限度として、売買代金の全部又は一部を支払ったものとみなす。」という規定が存在しており、供託金額の範囲で、遅延利息が発生しないこととなっています。
株券の供託手続と株価決定申立(株価決定裁判)
他方、譲渡承認請求者(株主又は第三者)においては、株式会社から株式買取通知(供託書の写し同封)を受領した場合、1週間以内に、株券を供託する必要があります。
供託すべき法務局は、株券発行会社の本店の所在地の供託所となります。実際は、日本銀行に供託する必要があり、手続きがやや複雑ですので、特に注意する必要があります。
また、譲渡等承認請求者は、株式会社に対し、遅滞なく、当該供託をした旨を通知しなければいけません。
譲渡承認請求者(株主又は第三者)が、この期間内に、株券の供託を行わなかった場合は、会社法142条において、株式の売買契約が解除できる旨が規定されており、譲渡承認請求者(株主又は第三者)は、株式売買代金を受領できなくなりますし、株価決定申立手続きに参加できなくなります。
株価決定申立(株価決定裁判)の後の株価相当額の供託金の還付手続と株券の還付手続
株式会社と譲渡承認請求者(株主又は第三者)との間で、株価に関する交渉がまとまったり、株価決定申立手続が終了した場合、株価相当額の供託金の還付と供託した株券の還付を受ける必要があります。
株価相当額の供託金の還付や供託した株券の還付のためには、相手方の還付同意書が必要となります。
すなわち、①株式会社は譲渡承認請求者(株主又は第三者)から供託した株券に関する還付同意書を入手して、法務局に赴き、株券の供託還付を受ける必要があり、②譲渡承認請求者(株主又は第三者)は株式会社から株価相当額の供託金に関する還付同意書を入手して、法務局に赴き、供託金の還付を受ける必要があります。
この際、株式会社は、譲渡承認請求者(株主又は第三者)に対する株式売買代金の支払い価格から、税務上、源泉徴収税を控除する義務を負っていますので、源泉徴収税相当額については、譲渡承認請求者(株主又は第三者)から返金してもらう必要があります。
また、この源泉徴収税の返金の手続きを回避するため、株式会社によっては、株式売買代金については、譲渡承認請求者(株主又は第三者)に対して、別途支払い、株価相当額の供託金については、譲渡承認請求者(株主又は第三者)から還付同意書をもらって、自ら還付を受けることの方が多いようです。