非上場株式を売却する際に知っておくべき法律の基礎

# 非上場株式を売却する際に知っておくべき法律の基礎

大切な資産である非上場株式。その売却を検討されている方にとって、法的知識の不足は思わぬ損失やトラブルを招くことがあります。実際、非上場株式の売却において多くの方が「もっと早く知っておけば良かった」と後悔されています。

非上場株式は上場株式と異なり、市場価格が存在せず、譲渡制限がかかっていることが一般的です。そのため、売却手続きの複雑さや税務上の取り扱いについて、事前に正確な知識を持っておくことが極めて重要です。

国税庁の統計によると、非上場株式の譲渡に関する税務調査の指摘事例は年々増加傾向にあり、特に適正な評価額の算定や特例適用の要件について誤解が多いとされています。

本記事では、弁護士や税理士といった専門家の知見をもとに、非上場株式売却時に知っておくべき法律の基礎知識を解説します。税務署が注目するポイントから、実際にあった法的トラブル事例、さらには相続・贈与絡みの特例措置まで、網羅的にご紹介します。

これから非上場株式の売却を検討されている方はもちろん、将来的な選択肢として考えておられる方も、ぜひ最後までお読みいただき、適切な意思決定のための知識を身につけていただければ幸いです。

1. **非上場株式売却の「落とし穴」とは?税務署が見逃さない3つのポイント**

1. 非上場株式売却の「落とし穴」とは?税務署が見逃さない3つのポイント

非上場株式の売却は、上場株式と比べて法的規制や税務上の取り扱いが大きく異なります。多くの経営者や投資家が気づかないうちに思わぬ税金を支払うことになったり、法的トラブルに巻き込まれたりするケースが少なくありません。

まず税務署が注目する第一のポイントは「適正な価格での取引」です。非上場株式は市場価格が存在しないため、恣意的な価格設定が可能です。しかし、相続税法や所得税法上の「時価」から著しく乖離した価格での取引は、贈与税や所得税の追徴課税リスクがあります。国税庁は「類似業種比準方式」や「純資産価額方式」などの評価方法を用いて取引の適正さを判断します。

第二のポイントは「特別関係者間取引」の把握です。親族や関連会社など特別な関係にある者との間での株式取引は、特に税務調査の対象となりやすいものです。例えば、同族会社の役員が自社株を低額で親族に譲渡した場合、その差額が贈与とみなされることがあります。

第三のポイントは「株式譲渡制限」への対応です。多くの中小企業の定款には株式譲渡制限が設けられており、取締役会や株主総会の承認なく株式を譲渡すると、その譲渡が無効となる可能性があります。売買契約を締結した後になって譲渡が認められず、代金返還や損害賠償などのトラブルに発展するケースも少なくありません。

これらの落とし穴を避けるためには、株式譲渡前に税理士や弁護士などの専門家に相談し、適正な評価額の算定や必要な社内手続きを確認することが不可欠です。特に高額な取引や事業承継を目的とした取引では、事前の法務・税務デューデリジェンスが重要となります。

2. **弁護士が解説!非上場株式の売却で後悔しないための法的チェックリスト**

# タイトル: 非上場株式を売却する際に知っておくべき法律の基礎

## 見出し: 2. **弁護士が解説!非上場株式の売却で後悔しないための法的チェックリスト**

非上場株式の売却は上場株式と異なり、法的な考慮事項が多岐にわたります。多くの方が見落としがちな法的ポイントを確認し、トラブルを未然に防ぐためのチェックリストをご紹介します。

1. 株主間契約書の確認

最初に行うべきは株主間契約書の精査です。多くの非上場企業では、株式の譲渡制限条項が設けられています。これに違反した売却は無効となる可能性があるため、必ず確認しましょう。特に先買権(他の株主が優先的に買取できる権利)や取締役会の承認要件に注意が必要です。

2. 会社定款のチェック

定款には譲渡制限に関する規定が含まれているケースが多いです。会社法第107条に基づき、非上場会社の株式譲渡には原則として会社の承認が必要となります。定款の内容と実際の承認プロセスを理解しておくことが重要です。

3. 税法上の影響評価

株式売却時には譲渡所得税が発生します。譲渡益に対して最大20.315%(所得税15%、住民税5%、復興特別所得税0.315%)の課税がありますが、取得費や譲渡費用は控除可能です。特に個人間での売買では適正な価格評価が重要となります。

4. 適切な株価算定

非上場株式の価格算定は複雑です。純資産価額方式、類似業種比準方式、DCF法など複数の方法があり、税務上の評価と実際の取引価格が乖離する場合もあります。第三者の評価機関による算定書を取得すると安心です。

5. 株式譲渡契約書の法的レビュー

契約書には少なくとも以下の項目を含めるべきです:
– 譲渡対象株式の詳細(種類・数量)
– 譲渡価額と支払条件
– 表明保証条項(株式の権利に瑕疵がないことなど)
– 契約不履行時の対応
– 秘密保持条項

6. デューデリジェンスの実施

買い手側は通常、対象会社のデューデリジェンスを要求します。売り手としては事前に自社の法的リスクを把握し、説明できる準備が必要です。労務問題や知的財産権、訴訟リスクなど開示すべき情報を整理しておきましょう。

7. 金融商品取引法の規制確認

非上場株式であっても、募集・売出しの形態によっては金融商品取引法の規制対象となることがあります。特に不特定多数への勧誘は有価証券の募集に該当する可能性があるため注意が必要です。

8. 独占禁止法の審査要否

大規模な株式取引の場合、公正取引委員会への事前届出が必要になることがあります。特に買収側が大企業の場合、独占禁止法上の企業結合審査の対象となる可能性を検討すべきです。

これらのチェックポイントを事前に確認しておくことで、非上場株式売却の法的リスクを大幅に軽減できます。専門的な内容も多いため、弁護士や税理士などの専門家への相談をお勧めします。西村あさひ法律事務所や森・濱田松本法律事務所などの大手法律事務所では、非上場株式取引に関する専門的なアドバイスを提供しています。

3. **知らないと損する!非上場株式売却時の税金対策と法的リスク回避の全知識**

3. 知らないと損する!非上場株式売却時の税金対策と法的リスク回避の全知識

非上場株式の売却は、適切な知識なしでは税金面で大きな損失や法的トラブルを引き起こす可能性があります。まず税金面では、譲渡所得として課税され、長期保有(5年超)なら所得税15%・住民税5%の計20%、短期保有なら所得税30%・住民税10%の計40%が適用されます。ただし、特例として「小規模宅地等の特例」類似の軽減措置や、特定の中小企業株式の売却益に対する課税特例もあるため、税理士への事前相談が不可欠です。

法的リスク回避としては、株主間契約の確認が重要です。多くの非上場企業では、先買権条項や株式譲渡制限条項が存在し、これらに反する売却は無効となることがあります。また、適切な株価算定も必須で、相続税評価額や純資産方式、DCF法など複数の方法を検討すべきです。国税庁は取引価格に疑義を持てば更正処分を行う可能性もあります。

デューデリジェンスの実施も重要なステップです。買い手が株式価値を正確に評価できるよう、財務状況や潜在的リスクを開示する義務があります。重要事実の隠蔽は、後に詐欺的行為として訴訟リスクをもたらすことも。特に個人間取引では、株式譲渡契約書の作成と公正証書化を弁護士の助力を得て行うことで、将来の紛争リスクを大幅に低減できます。

実務上の対策としては、税理士と弁護士の両方に相談することが最適です。大手法律事務所である西村あさひ法律事務所や森・濱田松本法律事務所などでは、税務と法務の両面からアドバイスを提供しています。また、M&A仲介会社の利用も選択肢の一つで、日本M&Aセンターやストライクなどは、適切な買い手探しから契約締結までをサポートしてくれます。

非上場株式売却は一生に数回あるかないかの重要取引です。税制は複雑に変化し続けているため、直近の税法改正も踏まえた専門家のアドバイスを受けることで、数百万円から数千万円の節税効果を得られる可能性があります。適切な準備と専門家の支援を受けることが、非上場株式売却における成功の鍵となります。

4. **経験者が語る非上場株式売却の盲点 – 実際にあった法的トラブルとその対処法**

# タイトル: 非上場株式を売却する際に知っておくべき法律の基礎

## 見出し: 4. **経験者が語る非上場株式売却の盲点 – 実際にあった法的トラブルとその対処法**

非上場株式の売却プロセスでは、多くの投資家が予期せぬ法的問題に直面します。ある製造業のスタートアップ企業の初期投資家は、株式売却時に会社の定款に定められた「株式譲渡制限条項」を見落としていました。結果として、取締役会の承認なく進めた売却交渉が無効となり、買い手候補者との契約違反で損害賠償請求を受ける事態に発展しました。このケースでは、弁護士を通じて会社側と協議し、適切な手続きを踏むことで最終的に売却を完了させましたが、時間と追加費用がかかることとなりました。

また、IT企業の元役員は株主間契約に含まれる「ドラッグアロング条項」(多数株主が株式を売却する際に少数株主も同条件で売却に応じる義務)の解釈を巡って法的紛争に発展したケースもあります。この問題は東京地方裁判所での調停により解決しましたが、売却価格の再交渉と弁護士費用で当初予定していた利益が大幅に目減りする結果となりました。

税務関連のトラブルも少なくありません。あるベンチャー企業の創業者は、非上場株式の評価額について税務署との見解の相違から、売却後に追加の譲渡所得税を課される事態となりました。このケースでは税理士を通じた交渉により一部減額されましたが、事前に専門家によるバリュエーションレポートを準備していれば防げた問題でした。

これらの事例から学べる対処法として、以下の点が重要です。まず、株式譲渡前に弁護士による定款・株主間契約の精査を必ず行うこと。特に優先株式や種類株式を保有している場合は、その権利内容を正確に理解しておくことが必須です。次に、取締役会や既存株主への事前相談と必要な承認プロセスを把握しておくこと。さらに、税理士と連携して適切な株式評価方法を選択し、課税関係を事前に整理しておくことが重要です。

また、実務上のポイントとして、売買契約書には表明保証条項を明確に定め、万が一の紛争に備えたエスクロー口座の活用も検討すべきでしょう。法的リスクを軽減するこれらの対策は、非上場株式売却の成功率を高める重要な要素となります。

5. **相続・贈与で取得した非上場株式の売却 – 押さえておくべき法律と特例措置**

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## 見出し: 5. **相続・贈与で取得した非上場株式の売却 – 押さえておくべき法律と特例措置**

相続や贈与によって非上場株式を取得した場合、売却時には通常の取引とは異なる法律や税制が適用されます。特に中小企業の株式を相続した場合、事業承継と売却の選択肢の間で悩むケースも少なくありません。

まず押さえておくべきは、相続・贈与で取得した非上場株式の「取得費」の考え方です。相続の場合、被相続人の取得価額を引き継ぐのではなく、相続税評価額が取得価額となります。この点は一般的な上場株式と同様ですが、非上場株式の場合は評価自体が複雑であるため、専門家の助言を得ることが重要です。

非上場株式の相続に関する重要な特例として「非上場株式等についての相続税の納税猶予・免除制度」があります。この制度は、中小企業の事業承継を支援するために設けられており、一定の要件を満たせば、相続税の納税が猶予または免除される仕組みです。ただし、この特例を適用した株式を売却すると、猶予されていた相続税が課税されるため注意が必要です。

また、贈与によって取得した非上場株式についても、「非上場株式等の贈与税の納税猶予・免除制度」が存在します。これは生前贈与による事業承継を税制面でサポートする制度ですが、やはり株式を売却すると納税猶予が打ち切られます。

売却時の譲渡所得計算においては、相続税や贈与税と所得税の二重課税を調整する「取得費加算の特例」も重要です。これは相続や贈与により取得した財産を売却する際、すでに支払った相続税・贈与税のうち一定額を取得費に加算できる制度で、譲渡所得を圧縮する効果があります。

近年、相続した非上場株式の売却先として、M&Aによる第三者への譲渡や、自社株買いによる会社への売却なども一般的になっています。特に小規模事業者の場合、後継者不在を理由に相続株式をM&A市場で売却するケースが増加しています。このような場合、事業承継税制の適用を受けていると売却に制限がかかるため、事前の検討が欠かせません。

相続・贈与された非上場株式を売却する際は、税理士や弁護士など複数の専門家による総合的なアドバイスを受けることが理想的です。東京都内では大手税理士法人や野村證券などの金融機関が非上場株式の相続・売却に関する相談サービスを提供しています。

最後に忘れてはならないのが、2017年に大幅に拡充された事業承継税制の活用です。この制度を活用することで、相続税・贈与税の負担を大幅に軽減できる可能性がありますが、適用要件が厳格であるため、専門家との綿密な相談が必要です。